研究課題/領域番号 |
24590631
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井澤 美苗 慶應義塾大学, 薬学部, 研究員 (10338006)
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研究分担者 |
辻井 岳雄 日本大学, 医学部, 研究員 (80424216)
中島 恵美 慶應義塾大学, 薬学部, 教授 (90115254)
酒谷 薫 日本大学, 工学部, 教授 (90244350)
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キーワード | プラセボ効果 / セロトニン輸送担体遺伝子多型 / 条件付け / 認知 |
研究概要 |
プラセボ効果の変動要因には「認知」と「条件付け」が知られている。条件付けによるプラセボ効果の変動を評価項目間で比較した。また認知の個別化要因としてセロトニン輸送担体遺伝子多型(S型およびL型)が示唆されていることから、プラセボ効果に対するセロトニン輸送担体遺伝子多型の影響について検討した。被験者8名を対象とし無作為化二重盲検法で臨床試験を行なった。薬の服用前後に主観指標(SSS,VAS)と客観指標(前頭前野血流量測定)で評価した。カフェイン条件付けにより、主観評価では条件付け群と非条件付け群の間に眠気改善の差は見られなかった。しかし、客観評価では条件付け群の脳血流量が低下する傾向が示された。カフェインの脳細動脈収縮作用の条件付けが示唆された。セロトニン輸送担体の遺伝子型は、8名の被験者のうち4名がS/S、3名がS/L、1名がL/Lであった。主観評価ではS/Sと比較してL/Lに眠気改善の傾向が見られ、客観評価でもS/Sに比べてL/Lで脳血流量増加の傾向が示された。予測していたL/Lがプラセボ効果を受けにくいという仮説とは反対の結果であった。この研究は第134回日本薬学会(熊本)において発表した。一方プラセボ効果の主観的・客観的評価の奏効率について過去3年分の臨床試験の文献を比較調査したところ、主観的評価が有意に大きいことがわかった。この結果はAsian Federation for Pharmaceutical Sciences 2013(Jeju, Republic of Korea)で発表した。 芳香療法の認知誘導における臨床試験について73th International Congress of Federation International Pharmaceutical2013において発表、J Jpn Cosmet Sci Soc にて論文発表した(inpress)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、目標被験者数40名のうち21名の試験を行った。なお、次年度も継続して臨床試験を行う。試験継続は当該倫理委員会にて承認されている。
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今後の研究の推進方策 |
プラセボ効果を含む心理効果は薬理効果とともに治療効果全体を向上させる。プラセボ効果の要因解析を引き続き検証するため臨床試験を実施する。被験者8名の臨床試験において、プラセボ効果に対する条件付けの影響は主観的には評価できなかったが客観的に評価できることが示唆された。今後は目標被験者数の述べ40名について検討を進める。同時にセロトニン輸送担体遺伝子多型(S型およびL型)とプラセボ効果との関連を探究する。 また薬物療法のカウンセリング(認知療法)はプラセボ効果を変動させる要因の一つである。先行研究の芳香療法のカウンセリング効果を発展させた臨床試験を実施する。薬理効果を変動させる心理効果の一環した研究と位置付ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置を購入しなかったため。研究は研究機関に既にあった脳科学装置(光トポグラフィー機器)を用いて行った。 臨床試験の継続ならびに新規を予定しており、そのための備品としてアミラーゼ唾液測定機器、被験者報酬が生じる。
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