研究課題/領域番号 |
24590632
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
杉本 なおみ 慶應義塾大学, 看護学部, 教授 (70288124)
|
研究分担者 |
堀 進悟 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80129650)
鈴木 昌 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70265916)
岩野 雄一 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90571729)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 救急医療 / コミュニケーション / 収容要請通話 / 医療者教育 / 応需・不応需 / 救急隊員 / 救急医 |
研究概要 |
研究計画書に示した「救急収容要請通話における伝達内容および順序には、通話の所要時間と正確性との間に相関が見られるか」という課題の検証は、3年目に全件数12000件の分析を終えるまで待たねばならないが、初年度に得たデータの範囲内で実現した分析においては、以下の3点が明らかになった。 救急収容要請通話の属性と所要時間の関係については、157通話を分析の結果、有意には至らなかったものの、それぞれ(1)救急隊・患者・家族による辞退に至った通話>医療機関による応需に至った通話>医療機関による不応需に至った通話、(2)受診歴のある傷病者>受診歴のない傷病者、(3)救急隊からの要請>消防庁からの要請、(4)遠方の救急隊からの要請>直近の救急隊からの要請 といった通話時間の差が見られた。 救急収容要請通話において頻出する「音読み」の身体呼称については、977通話を質的に分析した結果、(1)聞き分けられなくても特に問題とはならないもの(例:「腋下」と「腋窩」)がある一方、(2)同じような傷病において言及されることが多く、聞き分けられない場合に問題の生じる可能性があるもの(例:「側背」と「足背」、「鼻出血」と「耳出血」)、および(3)聞き取りに問題はないが、定義上の混乱を招くもの(例:「中腹部」) が見られた。 長距離搬送の収容要請時に救急隊員が受入医療機関側に提示する搬送理由に関しては、176通話を質的に分析した結果、(1)科目選定の結果、当該医療機関が「直近」となる、(2)指導医など他医療機関に所属する医師の指示である、(3)搬送中の傷病者が当該医療機関における「かかりつけ」である、(4)傷病者または家族が当該医療機関への搬送を強く希望している の4類型が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
毎月平均1000通話の録音が行われている。これは予想を上回るペースであり、その結果(1)断片化された状態で録音されている音声データの連結、(2)録音内容から個人情報を削除する匿名化、(3)業者に委託しての筆耕に申請時に想定した以上の作業を要したが、その一方で、2年目以降に予定していた一次データ分析に1年目から着手することが可能となり、当初2年目後半以降に行うこととしていた成果発表(中間報告)も、初年度中に3編の学会発表として結実するに至った。
|
今後の研究の推進方策 |
3年計画の2年目にあたる平成25年度は、引き続きデータの連結・匿名化・筆耕を行う。またこれと平行して、一次データ分析のためのコード化を行い、1年目に行った質的分析に加え、量的分析の準備を行う。さらに、国内外の学会において研究成果の中間報告を行う。同時に、国内学術雑誌への論文投稿も開始する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前述の通り、膨大な量のデータ処理が引き続き行われるため、連結・匿名化のための研究補助者謝金および筆耕に要する委託料、さらに海外学会投稿時の校閲料が主たる支出項目となる。またこれに加え(採択状況に左右されるが)、国内外の学会への旅費として研究費を使用することを予定している。 なお、年度末時期に生じた経費の支払い・清算手続きが平成25年4月以降になるため、平成25年3月31日時点では翌年度に使用する研究費が生じているが、平成25年4月以降に行う支払い・精算に使用する予定である。
|