• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

近代臨床医学成立過程における疾病概念の再構築に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 24590633
研究機関順天堂大学

研究代表者

坂井 建雄  順天堂大学, 医学部, 教授 (90114488)

研究分担者 澤井 直  順天堂大学, 医学部, 助教 (40407268)
キーワード疾患 / 医学実地 / 医学教育 / 熱病 / 医学史
研究概要

個別の疾患を扱う歴史上の臨床医学書を収集してその内容を分析したところ、18世紀後半から19世紀にかけてその疾患項目が変化したことが明らかにされた。今回は18世紀以前について分析を進めたところ、18世紀以前の個別の疾患を扱う臨床医学書は一般に「医学実地Practica medicinae」の表題をもち、大学での医学教育に用いられたものであること、その構成は多くの場合、頭から足まで身体の部位別の疾患と全身性の熱病とを扱うことが明らかになった。このような医学実地書の最初のものは11世紀のガリオポントゥスによる『受難録Passionarius』であり、最後のものは18世紀末のブルセリウスによる『医学実地教程』であった。その間の医学実地書は、4期に分けられた。第1期(11世紀~):最初の医学実地書はガリオポントゥスの『受難録』で、頭から足までの部位毎の疾患と熱病を収載。この時期には冊子写本として書かれた。第2期(1500年頃~):印刷出版を前提として書かれた。この時期まではフランスとイタリアの著者が多い。第3期(1630年頃~):ゼンネルト『医学実地』全6書以降。ドイツとオランダの著者が多くなった。第4期(1710年頃~):ブールハーフェ『箴言』以後。18世紀後半に疾病分類学書に置き換えられ、18世紀末のブルセリウスの『医学実地教程』が最後となった。医学実地書の多くは、頭から足まで部位別の疾患+熱病という原初形を維持した。この間、人体の構造と機能について理解は数多くの発見により深まったが、それが疾患の理解には大きな変化がなかったことを意味する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

18世紀以前の臨床医学の代表例として17世紀前半のゼンネルトについて研究し、生涯と業績について論文を刊行した。さらに18世紀以前の医学実地書について分析し、日本医史学会総会での発表と論文の刊行を予定している。

今後の研究の推進方策

古代のガレノスと近代以前の臨床医学書についてさらに分析を進めていく。また両者の医学をつなぐ、アヴィケンナの『医学典範』についても調査・分析を行っていく。

次年度の研究費の使用計画

研究のために必要な資料、書籍をおおむね購入できたが、科研費の残りの金額に見合った書籍がとくになく、次年度の研究費と合算して研究を進めることとした。
繰り越した金額を次年度の研究費とあわせて、研究のために必要な資料、書籍を購入する。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (1件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] ニコラウス・ステノによる筋の幾何学的記述─17世紀における筋運動の探求2014

    • 著者名/発表者名
      安西なつめ; 澤井直; 坂井建雄
    • 雑誌名

      日本医史学雑誌

      巻: 60 ページ: 21-35

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 医学史における腎臓観の変遷2014

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 雑誌名

      腎臓

      巻: 37 ページ: 182-186

  • [雑誌論文] トマス・シデナム(一六二四~一六八九)の『処方集約』2013

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 雑誌名

      医譚

      巻: 114 ページ: 16-37

  • [雑誌論文] ダニエル・ゼンネルト(1572-1637)の生涯と業績2013

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄; 澤井直
    • 雑誌名

      日本医史学雑誌

      巻: 59 ページ: 487-502

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ダニエル・ゼンネルト(1572-1637)の書誌2013

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄; 澤井直
    • 雑誌名

      日本医史学雑誌

      巻: 59 ページ: 587-610

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Japanese medical students’ interest in basic sciences: A questionnaire survey of a medical school in Japan2013

    • 著者名/発表者名
      Yamazaki-Y; Uka-T; Shimizu-H; Miyahira-A; Sakai-T; Marui-E
    • 雑誌名

      Tohoku J Exp Med

      巻: 229 ページ: 129-136

    • DOI

      10.1620/tjem.229.129

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 人体観の変遷─脳の働きをめぐって2013

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 雑誌名

      神経心理学

      巻: 29 ページ: 22-34

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ガレノス「身体諸部分の用途 第2巻」の解題と翻訳2013

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄; 池田黎太郎; 澤井直; 安西なつめ
    • 雑誌名

      日本医史学雑誌

      巻: 59 ページ: 115-136

    • 査読あり
  • [学会発表] 近代以前ヨーロッパにおける医学実地書の系譜2014

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 学会等名
      第115回日本医史学会総会・学術大会
    • 発表場所
      九州国立博物館、福岡
    • 年月日
      20140531-20140601
  • [図書] 図説 人体イメージの変遷2014

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 総ページ数
      238
    • 出版者
      岩波書店
  • [図書] 東大講義録・解剖学はじめの一歩2013

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      日本医事新報社
  • [図書] 解剖実習カラーテキスト2013

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 総ページ数
      373
    • 出版者
      医学書院
  • [図書] 腎臓のはなし─130グラムの臓器の大きな役割2013

    • 著者名/発表者名
      坂井建雄
    • 総ページ数
      204
    • 出版者
      中央公論社

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi