研究実績の概要 |
安全なセルフメディケーションの遂行のため、一般用医薬品が多剤併用時に薬物相互作用の原因薬物となるか否かを事前に明らかとし、有害作用発現を回避することを目的として、一般用医薬品のチトクロームP450(CYP)に対する阻害効果を検討した。一般用医薬品は、第二類・第三類医薬品に分類されており、特に使用頻度の高い精神神経用薬(鎮咳去痰薬、解熱鎮痛薬など)、消化器官用薬などに配合されている26種を対象にした。酵素試料としてヒト肝ミクロソームを用い、CYP1A2, CYP2C9, CYP2C19, CYP2D6, CYP3A4の5種に対する阻害の強さ(Ki値)、阻害様式を検討した。その結果、11種類の医薬品でCYPに対し濃度依存的な阻害が示された。最終年度においては、得られたKi値を用い、これら医薬品が臨床においてCYPの阻害薬となる可能性を評価した。その結果、Bromhexine hydrochloride、Tipepidine hibenzate、Difenidole hydrochlorideが臨床においてCYP2D6を阻害する可能性が示され、臨床薬物相互作用試験の必要性が示された。一方今回対象とした医薬品が代謝依存的な阻害を示すか否かを検討した結果、これらが代謝依存的な阻害剤となる可能性は低いことが示された。今回の検討から、比較的安全とされてきた一般用医薬品にも多剤併用時に薬物相互作用を引き起こす可能性のあることが明らかとなった。今後は臨床薬物相互作用試験を行い、当該医薬品の臨床における阻害の程度を確認するとともに、これら医薬品を投薬する際には、有害作用を回避するためにも併用薬の確認を行うなど十分な注意が必要であると考える。
|