平成27年度は、昨年度までに実施した研究内容をまとめて、学会発表及び論文にまとめた。当初の研究計画では、(1)医療・福祉従事者の需給モデルの作成と将来予測、(2)東アジア諸国への医療・福祉従事者需給モデルの応用、(3)医療・福祉従事者の国際移動の推計、(4)外国人看護師雇用医療施設に対するヒアリング調査およびアンケート調査、の4つを予定していたが、データの不足などから一部内容を変更した。 (1)に関しては、供給側からの分析は医師以外では十分なデータが得られず、医師の供給に関する分析と医療需要の分析が中心となった。特に医師に関する分析は、地理的偏在について取り上げ、住民の年齢を考慮した医療需要あたりの医師数の偏在は、従来の人口当たりの医師数の偏在よりも大きいことを示し、また医師の偏在は、新医師臨床研修制度導入以降拡大してきたことを実証した。 (2)に関しては、医療・福祉従事者に限らず、労働移動のモデルを国際的に拡張した分析を行った。二重経済モデルを用いて、タイの労働市場について分析し、開放経済化における転換点について考察した。 (3)に関しては、送り出し国としてのフィリピン、受け入れ国としての台湾、送り出し国から受け入れ国へ変化を遂げたタイに関して推計を行った。 (4)に関しては、主としてタイにおけるヒアリング調査を行った。要援護高齢者等のための介護サービス開発プロジェクト(LTOP)についてヒアリング調査を行い、社会の高齢化に伴うタイの問題点や福祉従事者人材育成のための試みについて調査した。
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