平成24・25・26年度の成果を踏まえて、鍼灸による有害事象・過誤に関する病態別分析の結果公表、鍼灸安全学のシラバス改訂と授業試行、および国内の当該領域教育担当者の意見調査を行った。また海外および国内の学会で成果の一部を発表した。 1.鍼灸に関連して発生したとされる有害事象・過誤の報告論文のうち、①2012~2015年に医学学術雑誌で発表された有害事象全体、および②B型・C型肝炎、についてレビューを行った。その結果、近年においても鍼治療後に発症した臓器損傷、感染症、神経損傷、伏鍼(異物)、皮膚病変その他が報告されていた。このうち感染症については鍼灸施術との因果関係が明確でない症例が多かった。特にB型・C型肝炎については鍼治療が感染経路であるというエビデンスを直接的に証明している報告論文はなく、鍼治療を感染経路と疑う文献の多くは厚生省(当時)から感染防止に関する通達が出された1987年以前の期間に行われた鍼治療であった。 2.前年度に実施したワークショップにおける議論と意見を踏まえ、また今まで散在していた教材や方法論を統合して鍼灸安全教育に特化した科目「鍼灸安全学」のシラバスに組み込み、実際に大学および専門学校の授業で試行した。大学では学生からの授業評価を受けた。その結果、授業の理解度や教材の使用に関する肯定意見が90%を超える良好な評価であった。 3.当初はデルファイ法による授業コンテンツの統一と合意を目標としたが、各校シラバス調査とワークショップを通して現状では15コマの科目を設置できない事情や、シラバス標準化が国家試験に反映される懸念などに配慮し、専門家の意見聴取による授業コンテンツの優先順位決定に変更した。2016年4月現在、質問紙の発送中である。
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