研究課題/領域番号 |
24590646
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
井上 剛 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80388941)
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研究分担者 |
木村 和美 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00388927)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遠隔医療 / PACS / 携帯インタ-ネット端末 / 遠隔地 |
研究実績の概要 |
<研究の目的>本研究では、遠隔地と都心部の脳卒中診療の地域格差を是正するため、遠隔地病院の院内PACSと都心部病院医師の携帯インタ-ネット端末を繋いで、脳卒中の遠隔地診療支援システムを構築し、検証する研究である。遠隔地は岡山県北部新見地区4つの病院、都心部は川崎医科大学である。システムの導入により、新見地区の脳卒中入院患者の日常生活動作の向上、発症4.5時間以内の脳梗塞に対する血栓溶解療法(t-PA 療法)の件数の増加、脳卒中患者の死亡率低下の効果の有無を調べる。本研究により他の遠隔地域でも最新の脳卒中診療を提供できる基盤研究を行う。 <研究の経過>システム導入費用約100万円の安価なクラウド型の遠隔画像診断システムのコニカミノルタ「連携ボックス」を選定した。脳卒中遠隔医療を遠隔地で導入する前に、運用の特徴を把握しプロトコール作成や問題点の確認のため、研究代表者が毎週1回火曜日午後に非常勤勤務している岡山市内の心臓病センター榊原病院で平成25年9月から、「連携ボックス」を用いた24時間対応の「院内PACSと携帯インターネット端末を用いた遠隔地域の脳卒中診療支援システム」を導入運用した。榊原病院は遠隔地と同様に常勤の脳卒中専門医は不在である。平成27年2月(運用1年6か月)まで25例登録。年齢は平均72歳、男性15例。脳疾患の内訳は、脳梗塞13例、TIA3例、くも膜下出血1例、脳出血3例、蘇生後脳症2例、硬膜下血腫2例。76%の患者が発症から24時間以内に本システム利用した。榊原病院の脳画像撮影から当大学へ院外コンサルト送信の時間は平均95分、当科のコンサルト受信から榊原病院へコメント返信の時間は平均36分。コンサルト時刻は7時~22時まで行われた。3例は川崎病院へ転院して、2例t-PA静注療法を行い、20例(80%)は榊原病院で外来・入院診療を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.遠隔画像診断治療補助システム導入の遅れ:「研究実施計画」に基づいて、川崎医科大学内で遠隔画像診断治療補助システム「i- Stroke」(富士フイルム社)の導入を試みたが、導入費用は800~1000万円と高額のため、大学内で導入できず。次に、100万円以内で導入可能なクラウド型の遠隔画像診断システムのコニカミノルタ「連携ボックス」を選定した。 2.研究者の人事異動:平成25年4月より研究代表者が新見地区に近い岡山県南西部地区の川崎医科大学附属病院から、新見地区に遠い医療圏の異なる県南東部地区の川崎医科大学附属川崎病院へ異動したため、病院間の繋がり(連携)が希薄になった。 3.遠隔地への導入の困難:岡山県内の25医療機関へ本システムの導入のため、院長、副院長、事務長、放射線技師等へ直接面会してプレゼンテーションを行ったが、現在、導入予定は新見地区3病院(長谷川病院は不可)、導入検討は高梁市の成羽病院のみである。現場の遠隔地では新しいシステムであるため、敷居が高く、医師や技師の負担増、導入のコストにみあう需要がないと考えられているようである。職員への周知についても院内講習会などを行っている。 4.病院で異なるPACS:病院ごとに画像管理のPACSソリューションが異なるため、実際に現場本システムを利用しやすくするためには、病院ごとに合わせた遠隔画像診断システムを導入する必要がある。各病院のPACSベンダーとの交渉と作業に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
ようやく、遠隔地の新見地区3病院で本システムの運用を開始しているところである。具体的には、平成27年3月には新見の太田病院で「Z連携」(新見医師会内の在宅遠隔医療システム)を用いた脳卒中遠隔診療システムのデモを行い、6月1日から新見中央病院で「コニカミノルタ連携ボックス」を利用した脳卒中遠隔診療を開始、6月頃から渡辺病院では「医知吾」(遠隔画像診断システム)の携帯端末ビューアーの開発を待ってから導入する予定である。遠隔地の高梁市の成羽病院でも職員への院内の講習会を行って、導入への具体的な話を進めていく予定である。また、岡山県南東部の遠隔地である和気地区や県北部の美作地区の医療機関へもう一度、本システム導入のお願いをしに行く予定である。 徐々にではあるが、遠隔地への導入が可能となっている。導入と同時に本システムの有用性を検証していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、システム運用中の心臓病センター榊原病院では「コニカミノルタ連携ボックス」の導入費用、システム維持費用、院内PACSの接続費用とパソコン端末費用は、榊原病院が負担しているため、本研究費用を使用していないため。
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次年度使用額の使用計画 |
本システムの導入予定の新見中央病院、渡辺病院、太田病院、成羽病院、今後他の病院への導入費用等に使用する計画である。
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