研究概要 |
統合失調症における疾患感受性遺伝子と薬物応答性との関連をみた。全対象に採血(5ml)を行い, 血液サンプルよりDNAを分離し, 疾患感受性遺伝子NRG1の1221533, COMTのVal158Met, DISC1のrs821616, DRD2のTaq1および-141C Ins/Delの遺伝子多型を同定した。NRG1221533, DISK1 rs821616, COMTval/metにおいては治療前のtotal BPRSスコアや4週目の%改善率に差を認めなかった。 一方、陽性症状, 興奮症状, 陰性症状, 認知症状, 不安抑うつ症状に分類し, 治療反応性を見た場合、NRG1221533では不安症状に、COMTval/metでは陽性症状および認知機能の改善率に差を見た。上記3多型で重回帰分析を行ったところ、陽性症状改善率にはCOMTval/met多型に、不安抑うつ症状にはNRG1221533との間に有意な相関が認められた。DRD2に関してはTaq1多型と-141C Ins/Delを組み合わせた場合,陽性症状に有意差が認められた。上記の遺伝子を網羅的に解析できるDNAチップが開発されれば, 現在のような試行錯誤的医療ではなく, 患者本人の体質, 病勢に応じた個別化医療の進歩に大きく貢献する可能性が広がると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は副作用に関する疾患感受性遺伝子の解析を始める。具体的には統合失調症300名の糖尿病や高血圧などで現在明らかになっている遺伝子多型を解析し、抗精神病薬の副作用との関連を検討する。さらに薬物標的部位であるドパミンD2,ドパミンD3, ドパミンD4,ドパミントランスポ-タ-およびセロトニン受容体5HT各種の遺伝子多型の同定する。さらに薬物動態学的遺伝子CYP2D6, CYP2C19, CYP2C9, CYP3A5, MDR1, MRP2遺伝子の多型を解析する。
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