研究課題
申請者は進行性神経変性疾患の動物モデルとして嗅球摘出(OBX)マウスを用い、OBXマウスにおける認知機能障害、特に海馬CA1領域におけるLTPの減弱とCaMキナーゼIIの活性低下の知見を電気理学的解析、生化学的解析により見出しており(Moriguchi et al., J. Neurochem. 2006)、OBXマウスにおける認知機能障害に対してST101の慢性処置により有意な改善効果を得られた。さらに、ST101による改善効果は、T-type VGCC阻害薬により有意に消失した。また、マイクロダイアリシス法を用いた研究により、OBXマウスの海馬において有意なAch量の減少が確認され、ST101はAch量を有意に改善した。このように、T-type VGCCの賦活化は、in vivoにおいても有意な認知機能改善効果を明らかにした。申請者は、ST101より強力な薬効を有する化合物SAK3に関する研究に従事した。これまでの研究より、SAK3は、ST101と異なり、記憶形成に重要な海馬において、T-type VGCCを介したCaMキナーゼII賦活作用を有することが明らかとなった。また、ADの原因物質として考えられているβ-amyloidの凝集には、β-secretaseおよびγ-secretaseによるAPPの切断が問題視され、現在、β-amyloidの凝集阻害薬の開発が進められている。ST101には、カルシウムシグナル賦活化作用だけでなく、β-amyloidの凝集阻害効果も有することを明らかにした。本研究により、T-type VGCC賦活化によるカルシウムシグナルを介した新しいアルツハイマー病創薬の治療戦略を確立した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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