研究課題/領域番号 |
24590656
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石黒 洋 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定准教授 (20422925)
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研究分担者 |
戸井 雅和 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10207516)
手良向 聡 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20359798)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 臨床薬理学 / 抗悪性腫瘍薬 / 支持療法 |
研究実績の概要 |
薬物治療は一般的に、薬剤の吸収や代謝、薬物(食物)相互作用などによって個人内および個人間における薬物動態の差異(ばらつき)が非常に大きいことが知られている。さらに悪性腫瘍に対する抗がん薬治療では、一般薬とは異なり最大耐量に近い推奨用量で抗がん薬が投与されるため、副作用出現リスクが非常に高い。一方で十分な抗がん薬の曝露量が得られなければ治療効果が減弱して予後が悪くなってしまう。一定の薬剤曝露量を維持しながらも副作用を軽減するためには支持療法の最適化も必須である。このような現状から、悪性腫瘍に対する抗がん薬治療では、最適な支持療法を行うことを必要最低限とした上で、抗がん薬の有効性を最大限に引き出す至適投与法の検討が重要である。
26年度においても下記のように、がん領域における抗がん薬の至適投与に関する報告を行った。 ①化学療法により誘導される悪心・嘔吐予防に対してOlanzapineを用いた場合の日本人における至適投与量に関する検討をCancer Studies Open Accessにて誌上発表した。②悪性腫瘍患者における高カルシウム血症におけるDenosumabの至適投与法に関する考察をJ Natl Cancer Instで誌上発表した。③妊娠期乳癌患者における抗がん薬の投与法に関する総説と妊孕性温存に関する総説を国内誌に誌上発表した。④ラパチニブの有害事象と遺伝的素因に関する総説を国内紙に誌上発表した。⑤抗がん薬投与により発現する便秘を軽減するための行動療法に関する研究成果を国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本応募研究課題として施行しているバイオマーカー探索研究は、主試験に登録された症例におけるバイオマーカー探索研究として施行しています。主試験の実施には、各参加施設において高度医療通知に基づき高度医療実施について厚生労働省医政局からの許可が必要となりますが、予定よりも厚生労働省からの許可に時間がかかり、主試験への登録自体に当初遅れが生じておりました。最近は主研究への登録が軌道に載り始めたところですが、平成27年3月31日時点でバイオマーカー探索研究登録可能な施設は16施設、症例登録数は32例に留まっております。主試験に参加されている各施設の先生にバイオマーカー探索研究への症例登録もお願いし症例登録へのインセンティブも多少設けさせていただいていますが、厚生労働省からの許可と主試験の各参加施設における倫理委員会承認だけでなくバイオマーカー探索研究に関しても各施設における倫理委員会承認の手続きが必要となっています。さらにCRCが配置されていない施設などでは、採血回数が少しでも増える試験への参加にハードルが高いことが要因と考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
バイオマーカー探索研究への参加表明をいただいた約50施設を含めて、倫理委員会承認に向けて今迄以上に様々な活動を行っていきます。対面での協力依頼を積極的に行った結果、当該施設においてはようやく登録に結びついてきました。また先進医療ファーラムが編集する先進医療NAVIGATORという雑誌に、当バイオマーカー探索研究を紹介する場を設けていただいており、近々に改訂版も発刊されます。またバイオマーカー探索研究参加施設メーリングリストを活用し、他の施設の倫理委員会承認や症例登録状況などが一見して分かる定期レポートを継続して運用し、また各施設における倫理委員会申請への補助も積極的に行っていきます。さらにJapan Breast Cancer Research Groupで行ってきた多施設共同臨床試験「アンスラサイクリン系薬剤かつ、タキサン系薬剤の治療歴を有する再発・転移性乳癌に対するCPT-11/S-1併用療法の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験」におけるS-1の臨床薬理学・薬力学的解析の結果(現在統計解析中)をまとめ今年の国際学会にて発表予定ですが、S-1という共通した薬剤を用いた主試験およびバイオマーカー探索研究に対するモチベーション向上につなげていきます。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度にバイオマーカー探索研究の症例登録を完了し、その検体集積後に薬物動態や遺伝子多型の解析を依頼する予定でした。しかしながら主臨床研究の症例登録期間が27年度に延長されるに伴って付随するバイオマーカー探索研究の症例登録期間も計画変更して症例登録を継続することとなり、全ての検体を集積後(27年度)に薬物動態や遺伝子多型の解析を依頼することとしました。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の様に、27年度にも継続してバイオマーカー探索研究の症例登録を行い、全ての検体の集積後に薬物動態や遺伝子多型の解析を行うこととし、未使用額はその経費に充てることとさせていただきたい。
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