研究課題
High mobility group box1(HMGB1)は、壊死細胞核から細胞外へ放出される新規サイトカイン分子である。我々は、脳梗塞巣が起炎性応答の関与によって、初期から相対的虚血部に向かって拡大形成されることに注目し、この梗塞巣拡大過程に特異的抗HMGB1単クローン抗体治療法を開発した。本治療法はラット中大脳動脈を2時間閉塞・再灌流モデルにおいて、脳梗塞巣の抑制及び運動機能の回復において極めて優れた効果を発揮した。本研究ではヒト臨床へ応用するための前臨床研究として、扱いやすい小型の霊長類動物のマーモセットの中大脳動脈2時間閉塞・再灌流モデルを用いて、単クローン抗体の有効性、安全性及び投与用量を検討しました。霊長類動物、コモンマーモセットの脳虚血再灌流モデルを作製成功した。64Cu‐DOTA で標識された抗体を用いて、ポジトロン断層法(PET)撮影で継時的に抗体の生体内の動態分析(各臓器の分布)、脳の虚血領域における抗体の局在を明らかにしました。脳の虚血部位に対照抗体、抗HMGB1抗体ともに集積する象が得られた。集積量は、対照抗体の方が多かった。末梢臓器では対照抗体投与後早期から肝臓で高い陽性像観察された。抗HMGB1抗体投与群では、心臓と肺高かった。抗HMGB1抗体の実験使用量の5倍量の投与後の急性毒性試験を実施しました。脳、心臓、肺、肝臓、胃、小腸、大腸、腎臓、脾臓など主な臓器にて、光学顕微鏡下に異常所見は認められなかった。抗HMGB1抗体0.75、1.5、3.0㎎/kgの6日間連続静脈内投与は、対照抗体群と比較、一般状態、体重、餌さ摂取量のいずれにも有意の差がなかった。抗体投与1週間後、血液検査肝機能、腎機能すべて正常範囲内であった。以上の結果から治療用に使用した抗HMGB1 抗体は、本投与量の範囲では安全に使用できることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究ではヒト臨床へ応用するための前臨床研究として、扱いやすい小型の霊長類動物のマーモセットを使用した。コストを減らすため、繁殖しながら実験を進めていくことが考えた。ラットと違う繁殖は難しいのでマーモセットの実験進度が計画よりやや遅れました。その代りにラットで単クローン抗体の有効性、安全性及び投与用量を検討しました。
マーモセットの繁殖について、他の経験がある大学を指導してくれ、繁殖を成功した。これから遅れた研究内容を含め、研究を進めていく。
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