研究課題/領域番号 |
24590661
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
小手川 勤 大分大学, 医学部, 准教授 (20264343)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 / 中国 / 韓国 |
研究概要 |
背景と目的:本研究は、医薬品応答性の民族差を生じさせる外的要因として食習慣に着目した。これまでの研究により、アップルジュースが取り込み型トランスポーターであるOrganic Anion-Transporting Polypeptide (OATP) を介して医薬品の体内動態を大きく変化させることが明らかにされている。しかし、どの成分が原因物質なのかについては明らかにされていない。アップルジュースに含まれるクエルセチンおよびその関連物質はお茶やタマネギなど多くの食品に含有されている。もしクエルセチンおよび関連物質が原因成分であるならば、それを含有する食品摂取の食習慣の民族差が医薬品応答性に影響する可能性がある。これらの物質による医薬品の体内動態や薬理作用の変化を検討する前に、クエルセチンおよび関連物質が果汁中にどのくらい含有されているのかについて検討した。 方法:7つの異なるブランドのアップルジュースに含有されるクエルセチンおよびその配糖体をHPLCにて測定した。 結果:クエルセチンの配糖体の濃度は,アップルジュースのブランドによって大きく異なっており、ほとんど検出されない製品もあれば、高濃度で検出される製品も存在することが明らかになった。また、クエルセチンのアグリコンについては、2つの製品のみでHPLC上にピークが検出できたが定量限界以下であった。 考察:今回測定したクエルセチンの濃度では,OATPを十分阻害出来ない可能性が考えられた。そのため,配糖体がOATPの阻害に関与している可能性があると考えられた。また、アップルジュースのブランドごとに含まれるクエルセチンやその配糖体の濃度は大きく異なることから, アップルジュースのブランドにより,薬物の体内動態への影響が異なる可能性が示唆された。今後はアップルジュース以外のクエルセチン含有食品についての検討も必要になると考えられた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
医薬品の体内動態を変化させる原因物質の候補であったクエルセチンおよびその配糖体濃度が、想定されていた以上に低濃度であり、かつアップルジュース製品間のバラツキが大きいことが示された。従って、これらの候補物質の影響を臨床試験で確認するにあたっては、どの製品を用いるのか、あるいはアップルジュース以外の食品を用いるべきか等について慎重に検討べきであり、根拠無く果汁あるいは食品を選んで、安易に臨床試験を行うべきでないと考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた研究成果から、用いるアップルジュースの製品を絞り込んだ上で、臨床試験により薬物の体内動態、薬効への影響を検討する。また、アップルジュース以外の飲料、食品(お茶等)についても、クエルセチンやその配糖体含有量を検討した上で、臨床試験計画を検討する。クエルセチンやその配糖体含有量が明らかになった場合は、食品ではなく、それらの成分のみを投与することによって、薬物の体内動態、薬効が影響を受けるか否かについての研究も検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
アップルジュースによる薬物の体内動態、薬効への影響を検討する臨床試験を既に立案した。本年5月に倫理委員会に申請する予定である。この臨床試験では、研究協力者(被験者)への謝金、臨床研究補償保険加入費用、医薬品および果汁購入、採血関連用具購入、薬物濃度測定のためのカラムや試薬購入などに研究費を使用する。また、研究成果は日本臨床薬理学会あるいは日本薬理学会で発表する。その際の旅費に研究費を使用する。
|