研究課題/領域番号 |
24590663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
中村 光浩 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (30433204)
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研究分担者 |
村手 隆 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30239537)
坂野 喜子 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (50116852)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 白血病 / バイオマーカー / 抗がん剤 / スフィンゴリン脂質 / リピドミクス / LC-MS / 質量分析装置 / メタボノミクス |
研究概要 |
わが国の白血病発生率は年々増加傾向にあり、2006年には年間人口10万人当たり5.9人で、年間7400名以上が死亡している。その治療法の確立に向けて分子レベルでの病態解明が待たれる疾患であり、臨床現場では白血病治療の診断・予測・治療的介入のための高感度、高選択性のバイオマーカーが待ち望まれている。本研究の目的は、白血病メカニズムをスフィンゴ脂質(SL)代謝物プロファイルに着目して分子レベルで解明し、得られた新規白血病SLバイオマーカー(SLバイオマーカー)を白血病の診断・治療的介入に応用することにある。 リピドミクスにおいてSLバイオマーカーの量的変化を正確に測定するための最大の技術的課題は、高選択かつ超高感度な質量分析(MS)測定系の確立である。申請者は、今年度、白血病細胞のSLの網羅的リピドミクスに適した、LCMS-イオントラップ(IT)-TOFを確立した。本分析法はCore-Shell型充填剤カラムを用いることで、従来法の3-4倍のハイスループット化を達成している(“Simultaneous determination of sphingolipid metabolites by LC/MS-IT-TOF using Kinetex Core-Shell HPLC column”, 53rd International Conference on the Bioscience of Lipids, 2012/9/5-8, Canada)。本測定法は白血病の診断・予測・治療的介入に有用なSLバイオマーカー検出に有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、質量分析装置(MS)を用いたリピドミクスにより白血病患者の血液試料のSLプロファイルを求め、分子生物学的知見と組み合わせることにより、白血病の分子レベルでの病態解明を行う。研究代表者は、この目的を達成するため高い質量精度を有し微量成分の一斉分析に適したLCMS-IT-TOF、および優れた定量性を持つLC-MS/MSの分析系を開発した。 診断結果の選択性を向上させるため複数のSLを組み合わせる指標をCer/S1P比を検討した。我々の分析系は、試料からSL抽出後、LCMS-IT-TOF(島津製作所)あるいはLC-MS/MS(ABI 4000、AB Sciex社)を用いて分離定量を行った。測定項目はSLのC16-、C18-、C20-、C22-、C24-、C24:1-セラミドとした。一方、慢性骨髄性白血病の病態メカニズムを明らかにするため、がん遺伝子Bcr-Ablを発現したBa/F3細胞を用いた検討を開始しており、抗がん剤暴露による細胞内セラミドと耐性化を関連を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
1.LCMS-IT-TOFを用いたグループ特異的リピドミクスによるSLバイオマーカーの探索 プリカーサーイオンスキャンおよびニュートラルロススキャンを行い、白血球細胞内で抗がん剤処理により変化するSLの各クラス(コリン、エタノールアミン、イノシトールおよびセリン)を、培養細胞において特異的かつ網羅的に同定し、SLの生成代謝経路を明らかとする。また、リピドピクスでプロファイリングソフトウェアをもちいることでバイオマーカーを主成分分析により探索する予定である。 2. SLプロファイルと関連した細胞内情報伝達メカニズムの解明 がん遺伝子Bcr-Ablを発現したBa/F3細胞を用いて、SL代謝酵素阻害剤(フモニシンB1(セリン-パルミトイル転写酵素阻害剤としてde novo合成を阻害する)、N-SMase inhibitor (SMase阻害剤)、N-oleoyl ethnolamine (ceramidase阻害剤)、N,N-dimethylsphingosine (SPHK阻害剤))、SPHK1およびSPHK2のsiRNAにより、SLプロファイルと関連する細胞内情報伝達メカニズムを検討する。SPHK活性測定とSPHK1およびSPHK2の蛋白発現量を評価する。細胞内生存シグナル、アポトーシスシグナルとしてカスパーゼ3、カスパーゼ9、PARP、AKT、ERK、BCL2、BAX、p53等をウエスタンブロッティング等により検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
LCMS-IT-TOF用プロファイリングソフトウェアの購入を予定している。高速で安定した精密質量測定が可能なLCMS-IT-TOFはリピドミククス領域の強力な分析ツールである。LCMS-IT-TOFはイオントラップにより一度の分析で豊富な質量情報を得ることができるので、これらから得られる膨大な情報から、正常サンプルと病態サンプルの変化した部分を再現性よく探し出すためにはプロファイリングソフトウェアが必要である。 培養細胞におけるSLの分子生物学的検討のために、細胞培養用の培地、種々の抗体(カスパーゼ3、カスパーゼ9、PARP、AKT、ERK、BCL2、BAX、p53)、各種阻害剤およびsiRNA作成のための費用は必要となる。その他ガラス容器、試薬の購入を予定している。
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