研究課題/領域番号 |
24590663
|
研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
中村 光浩 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (30433204)
|
研究分担者 |
村手 隆 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30239537)
坂野 喜子 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (50116852)
|
キーワード | セラミド / 白血病 / スフィンゴリン脂質 / バイオマーカー |
研究概要 |
スフィンゴリン脂質(SL)は細胞死誘導ならびに細胞増殖に深く関連する細胞内情報伝達物質であり、抗がん剤治療の診断・予測・治療的介入のためのバイオマーカーとして着目されている。平成25年度は質量分析装置によるスフィンゴリン脂質(SL)リピドミクス手法のバイオマーカーの感度および再現性を高分解能を有する四重極-飛行時間型質量分析計(Q-TOF/MS)を超高分離液体クロマトグラフィー(UPLC)と組み合わせたUPLC Q-TOF/MSを用いることにより改良した。ギ酸アンモニウムを含む水/メタノール溶液グラジエントを用い、ODS-C8カラムあるいはKientex Core-Shellカラムにより行った。UPLCによりC16-、C17-、C18-、C24-およびC24:1-セラミド(Cer)を分離後、MS検出部に導入した。イオン化はエレクトロスプレーイオン化法、ポジティブイオンモードで検出した。従来のC18カラムに比して測定時間を70%短縮できた。本研究成果は、7th International Ceramide Conferencesにおいて「Simultaneous determination of ceramides by UPLC QTof MS using Kinetex Core-Shell Column」、日本薬学会第134年会において「第UPLC Q-Tof/MSによる新規セラミド分析系の開発」の演題にて発表した。本SL測定法は、皮膚科領域のバイオマーカーとして「Interferon-γ Decreases Ceramides with Long-Chain Fatty Acids: Possible Involvement in Atopic Dermatitis and Psoriasis」の研究にも応用できた。 In vitroで、マウスIL-3存在下Ba/F3細胞あるいはIL-3非存在下Ba/F3-p210細胞白血病を用いた検討により、Cerが慢性骨髄性白血病のがん化学療法耐性化のSLバイオマーカーとなる可能性を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
UPLC-TOF-MSを用いたハイスループットSL測定系を確立した。特定のアシル鎖を有するCer、スフィンゴミエリン、スフィンゴシンあるいはS1P/Cer比、Cer/グルコシルCer比の定量が可能となった。慢性骨髄性白血病モデル細胞に対する抗がん剤の影響を検討した。マウスIL-3存在下Ba/F3細胞あるいはIL-3非存在下Ba/F3-p210細胞白血病の細胞障害メカニズム解明のため慢性骨髄性白血病治療薬ニロチニブ添加時のCer含量を測定した。C16-、C17-、C18-、C24-およびC24:1-Cerのm/zは各々538.52、552.54、566.55、650.65および648.63であった。IL-3非存在下Ba/F3-p210細胞のCer含量はニロチニブ処理により増加していた。Cerが慢性骨髄性白血病患者における抗がん剤耐性化の新規バイオマーカーとなる可能性を示した。さらに、第86回日本生化学会大会の「レスベラトロールによる白血病細胞株への細胞障害性機序の解析」でのCer測定に応用した。測定系は確立されているが、本バイオマーカーの臨床評価が遅れているので、倫理委員会および患者検体の測定を急ぐ必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
SLプロファイルと関連した細胞内情報伝達メカニズムの解明:SLプロファイルと分子生物学的データの検討から、CerとS1Pの量的比率(Cer/S1P比)が、がん細胞の増殖、分化の予測に有用との知見を得ているので、SPHK アイソザイムの特異的抗体を用いて細胞内局在や組織内分布を検討する。血球系細胞におけるSPHK1の関与を明らかにする。 本研究が目指す最終成果物は、SL バイオマーカーの臨床での有用性の実証である。SLバイオマーカーの臨床評価を、慢性骨髄性白血病患者を対象として予定している。本臨床試験では岐阜薬科大学および施設内倫理委員会の審査を受ける。被験者の白血球のSLプロファイル、患者基本情報、血液学的・形態学的検討、化学療法プロトコール、副作用等の情報を解析する。SLプロファイルを、投与量、抗がん剤(ダサチニブ、ニロチニブなど)、投与期間、臨床検査マーカーにより層別し、SLバイオマーカーの臨床における診断・予測・治療的介入に係る有用性を検証する。さらに形態学的知見および種々の腫瘍マーカーとSLプロファイルを比較検討し、ヒトに適用可能なSLバイオマーカー候補を決定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究進捗に応じた試薬、実験器具等の使用状況に応じて平成26年度(最終年度)に繰り越した 実験用試薬、細胞培養器具の購入に充当する予定である。
|