研究課題/領域番号 |
24590665
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
内山 和彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50298428)
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研究分担者 |
内藤 裕二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00305575)
高木 智久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70405257)
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キーワード | SLC38A9 / azathioprine / 6-TGN / EAI / Express Genotyping |
研究概要 |
【目的】本研究はIBD患者におけるAZAの代謝酵素を含む応答性の遺伝子多型を解析することで薬物の血中濃度との相関を検討し、最終的には遺伝子多型ならびに併用薬剤から患者個人の免疫調整薬の至適投与量を決定することを主な目的として検討した。 【方法】HapMap由来ヒトリンパ球細胞30株を用いて5-ASAおよびAZA刺激にて発現誘導される遺伝子のEAI(Expressing Allele Inbalance)をEG(Express Genotyping)法を用いて測定し、複数の細胞株でSNP(Single Nucleotide Polymorphism:遺伝子多型(一塩基多型))によってEAIを生じる遺伝子発現を同定した。さらに当院にてAZA投与中の炎症性腸疾患患者の血液をもちいて、同定された遺伝子多型のgenotypeをそれぞれの患者で測定し、AZAの代謝産物である血中6-TGN(6-thioguanine nucleotide)濃度との相関を検討した。 【結果】HapMap由来ヒトリンパ球細胞に5-ASAおよびazathioprineにて刺激した際に2倍以上のEAIを検出できたプローブの上位4つについて患者血液から同定したgenotypeとそれぞれの患者の血中6-TGN値との相関を検討した結果、細胞表面のトランスポーターの一つであるSLC38A9の遺伝子多型のgenotypeが、AZA投与時の血中6-TGN濃度と非常に強い相関を示すことが分かった。 【考察】ヒトリンパ球細胞に5-ASAとAZAの刺激によって誘導されるSNPを有する遺伝子のEAIの測定が可能であった。本検討では候補遺伝子としてSLC38A9が同定され、そのgenotypingは患者の血中6-TGN値と強い相関を示した。今後、さらなる症例の蓄積とともに、SLC38A9の機能解析をおこなうことで、SLC28A9のAZA投与時の血中濃度予測ジェネティックバイオマーカーとしての有用性、および炎症性腸疾患患者における病態への関与が明らかになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
azathioprine投与患者における血中6-TGN濃度測定は、遺伝子発現の統計解析が可能となる症例数を確保でき、詳細な解析をおこなった。その結果、SLC38A9の遺伝子多型と血中6-TGN濃度に有意な相関を得ることができ、その成果を国内外の学会で発表した。さらに成果をまとめ、PLoS One誌に投稿、掲載された(Uchiyama K, Takagi T, Naito Y. et al., New genetic biomarkers predicting azathioprine blood concentrations in combination therapy with 5-aminosalicylic Acid. PLoS One. 2014 Apr 24;9(4):e95080.)。SLC38A9の機能解析に関しては現在予定している段階。
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今後の研究の推進方策 |
研究の全体構想は免疫調節剤であるAZAの血中濃度を、ジェネティックバイオマーカーを用いて薬剤投与前に予測することにより、難治性炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎やクローン病の治療に応用しようとするものである。すでに我々は当該薬剤によりその発現が変動し血中濃度と相関する遺伝子(SLC38A9)およびその関連遺伝子多型を同定している。そこで今後の研究において、この候補遺伝子を当該薬剤投与予定患者の検体を用いて、有効性や副作用予測として有用であるかを検討することが推進方策と考えられる。 具体的にはAZA投与予定のIBD患者に対しあらかじめSLC38A9の遺伝子多型を調べた上で、AZAの至適投与量を決定し、投与後の血中6-TGN濃度、臨床経過を観察し、AZA投与時の6-TGN血中濃度、病勢コントロールのジェネティックバイオマーカーとしてのSLC38A9の遺伝子多型の有用性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在進行中である細胞実験をおこなうための培養液の購入、および臨床検体におけるSNP検索のためのPCR関連試薬の購入が遅延したため。 理由に示した細胞実験関連試薬、およびSNP検索のためのPCR関連試薬を購入し、研究の達成を目指す。
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