研究課題
炎症性腸疾患の治療において、免疫調節剤による病勢コントロールは非常に重要な役割を担っている。しかし、その有効性と安全性には薬剤代謝酵素の遺伝子発現による個人差があるのも事実である。本研究では、当院におけるazathioprine(AZA)の使用経験、およびその代謝産物である血中6-TGN濃度測定結果を元に、AZAの有用性と安全性を予測するgenetic biomarkerを同定することを目的とする。これまでの成果で、EG(エクスプレス・ジェノタイピング)法を用いたAZA投与後のHapMap由来ヒトリンパ球細胞における遺伝子発現をもとに、当院におけるAZA使用患者における血中6-TGN(AZAの代謝産物)濃度の測定結果を層別化して検討した結果、6-TGN濃度を予測するgenetic biomarkerがSLC38A9であることが予測された。さらに、IBD患者検体を用いた検討では、AZA投与量と6-TGN値の間に相関を認めず、SLC38A9の遺伝子多型が6-TGNの血中濃度に影響を及ぼしていることがわかり、SLC38A9がAZAの薬剤代謝における新たなgenetic biomarkerであることが示唆される結果であった。AZA投与時の副作用および作用発現には血中6-TGN濃度が深く関与していることが分かっており、投与前に効果発現や副作用を予測が可能となるbiomarkerの発見は非常に有意義であると考えられた。本年度は研究成果を論文化し、PLoS One誌(2014 Apr 24;9(4))に報告した。
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PLoS One
巻: 9 ページ: e95080
10.1371