研究課題/領域番号 |
24590666
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
安藤 仁 自治医科大学, 医学部, 准教授 (50382875)
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キーワード | 臨床薬理学 / 時間治療 |
研究概要 |
肝や脂肪組織などの末梢体内時計は、細胞内においてAMPキナーゼやPGC-1αなどの代謝関連鍵分子と相互に発現を制御しながら、代謝の恒常性を維持している。近年、末梢時計障害は2型糖尿病を初めとする生活習慣病の一因であることが判明した。そこで本研究で は、それらの代謝関連鍵分子を標的とする2型糖尿病治療薬を用い、末梢時計障害を改善することにより効果的に代謝異常を治療する投与方法を動物モデルにおいて開発し、さらに、その治療法の有用性を患者を対象とした臨床試験により検証することを目的とした。 これまでに、まず、正常マウスを用いて末梢時計制御薬の探索を行ったところ、AMPキナーゼ・PGC-1α経路に作用する治療薬であるメトホルミンおよびGLP-1アナログが末梢(肝・脂肪組織)時計に影響することを見出した。末梢時計の時刻は摂食の影響を強く受けることが知られており、GLP-1も主に摂食時に分泌されるホルモンであることから、次に、GLP-1アナログと摂食の末梢時計への影響の差異を検討した。その結果、GLP-1アナログは摂食とは異なる様式により末梢時計へ作用し、その作用の強さは摂食と同等以上であることが判明した。 次に、肥満糖尿病モデルマウス(ob/obマウス)を用い、これらの薬物の投与時刻が治療効果に影響するか否かを検討した。その結果、少なくとも7日間の短期投与では、血糖値や体重など代謝関連マーカーにおよぼす投与時刻の影響は認められなかった。 また、末梢時計の糖代謝への関与をより明確にするために、これらの実験と並行して肝の体内時計と空腹時血糖リズムとの関連を検討した。その結果、肝の体内時計は肝糖放出を制御し、空腹時血糖リズムを形成していることが明らかになった。 そこで今後は、肥満糖尿病モデルを空腹時血糖を解析しやすいモデルに変更し、代謝改善効果に優れたメトホルミンやGLP-1アナログの投与時刻を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、病態モデルにおいて(末梢時計を改善し)効果的に代謝異常を改善する適切な投与時刻を見いだせていないため、臨床研究を開始するまでにはまだ至っていないが、末梢時計の制御方法や末梢時計と血糖値との関連を見出し、その一部は論文発表もしており、おおむね順調に基礎的知見を蓄積できている。
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今後の研究の推進方策 |
ob/obマウスのみならず、高脂肪食を負荷したマウスも末梢時計障害を認めることが報告されている。そこで、病態モデルを高脂肪食負荷モデルに変更し、メトホルミンやGLP-1アナログの末梢時計及び代謝改善効果におよぼす投与時刻の影響を検討し、末梢時計を介した効果的な治療法を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は、3年目となる次年度は必要経費を減じる予定であったが、次年度も基礎研究を1~2年目と同様に行う必要が生じたため、旅費等を削減して次年度の物品費にあてることにした。 次年度も旅費を削減(国内2回・15万円を計上)し、論文校正・投稿料以外はすべて物品費(動物購入代、試薬代)となる予定である。
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