研究課題
アザチオプリン(AZA)は、難治性疾患である炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病)に対して適応を有する免疫抑制剤であり、治療上重要な位置を占めている。しかしAZA療法の問題点として、骨髄抑制などの重篤な副作用がみられること、副作用・有効性発現に個人差があること、小児での安全性が十分には確立されていないことが挙げられる。本研究の目的は、薬物動態関連分子の機能的解析により、炎症性腸疾患薬AZAの反応性に関わるファーマコジェネティック・バイオマーカーを探索し、さらにその活用法を提案すること、および臨床研究マインドをもつ薬剤師の育成に向けた教育プログラムを創出することにある。平成27年度は、前年度に見出したAZAの臨床効果のバイオマーカー候補因子について、ハプロタイプおよびTag-SNPを特定するために詳細な検討を行うとともに、被験者の臨床情報を収集し、全分析データと臨床データとの統合解析を行った。低用量のAZAを用いる炎症性腸疾患治療において、緩解導入維持の効果がITPA 94C>Aの遺伝子多型間で異なることがわかった。また、新たな候補遺伝子のディプロタイプが副作用の発現抑制に寄与する可能性が示された。本研究の対象者では、従来検討されてきたTPMT多型、ABCC4多型、および血中6-TGN濃度とAZAによる副作用との間に相関性を認めなかった。さらなる検討が必要であるが、これらの因子を組み込んだ個別化治療アルゴリズムが示唆される。
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