研究課題
本研究は,大腸癌の抗EGFR抗体治療において未だ規定できない効果予測因子を明らかにするために,[1]抗体治療薬によって検出される標的分子の組織発現解析法を構築し,治療薬の組織結合部位の特定を行うと共に,[2]治療効果との関係性を明らかにし,[3]さらに新規の効果予測検査法を確立することを目的としており,H25年度は,国立がん研究センター中央病院の協力を得て抗EGFR抗体薬既治療のRAS/BRAF野生型EGFR陽性大腸癌を用いた前向き観察研究のための症例選択およびRAS/BRAF野生型大腸癌細胞株を用いた新規効果予測マーカーの探索に用いるhEGFR遺伝子導入細胞株の作製準備を行った.本年度は,セツキシマブを用いたEGFR検出法と同等の結果が得られる代替IHC法(surroCTX-EGFR検出法)を用いた解析を行った.RAS/BRAF野生型の確認はサンガー・シークエンス法により行い行った。検討を行った32例中,12例が本EGFR検出法で陽性となった.この結果に基づき生存期間解析を行ったところ,EGFR陽性群および陰性群間で,有意な生存期間延長は認められなかった.一方,H25年度から準備を進めていたSW48細胞およびこの細胞に治療抵抗性を示すKRAS変異(G12D)をknock-inしたSW48/G12D細胞へのhEGFR遺伝子導入については,一度安定発現細胞を複数株得たがEGFR発現量が低かったため,再度作製を行った.その結果,SW48細胞ではEGFR高発現細胞は得られなかったものの,SW48/G12D細胞では高発現細胞が得られた.
3: やや遅れている
本研究目的の達成のため,3年目にあたる平成26年度は,上述のように①セツキシマブを用いたEGFR検出法と同等の結果が得られる代替IHC法(surroCTX-EGFR検出法)を用いた解析および②SW48細胞およびこの細胞に治療抵抗性を示すKRAS変異(G12D)をknock-inしたSW48/G12D細胞へのhEGFR遺伝子導入を予定していた.①においては,新たな知見は得られなかったものの,一部の統計解析を除き,概ね予定通り進めることができたといえる.②においては,SW48細胞とSW48/G12D細胞の両方において,hEGFR遺伝子導入細胞を作製する予定であったが,再作製を経てSW48/G12D細胞のみの完成に留まった.こうした状況を鑑み,今年度の研究の進捗については,自己点検による評価の区分を(3)とした.
研究期間の延長を行った本年度は,上記②について検討を完了させ,大腸癌の抗EGFR抗体治療において未だ規定できない効果予測の候補因子を明らかにする.最終的にこれら結果をとりまとめ,成果発表を行う.
とくに上記②のhEGFR遺伝子導入細胞を作製に遅延が発生し,これを次年度に行うこととしたため,次年度使用額が生じた.
本年度同様,次年度も主に物品費に充てる予定であり,費目別には以下のように計画している.【物品費】CTX-EGFR検出や遺伝子改変に必要な試薬,EGFR遺伝子増幅解析に必要となる試薬を購入する予定である.その他の消耗品として免疫組織化学研究用試薬,細胞培養用試薬,ウエスタンブロッティング解析など生化学研究に使用する試薬を購入する予定である.一方,設備備品費は,研究代表者が所属する部門に主要な研究設備が整っており,新たな設備備品の購入は考えていない.【旅費】情報収集や成果発表のため国内外の学会へ参加予定である.【人件費・謝金】該当なし.【その他】本研究で得られた成果を,学会誌等へ投稿することを予定している.研究推進にあたっては,計画に基づき実験を進めていき,研究費を有効活用したい.
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