研究課題
平成24度は東北大学病院において血液培養から分離されたAcinetobacterを対象に菌種レベルにおける正確な同定をrpoB遺伝子のシークエンス解析により行った。その結果、血液培養由来株においてはA. soliが最も分離頻度が高い事が新たな知見として得られた。Acinetobacter属菌は菌種によりその生命予後が異なる可能性が指摘されており、正確な同定は疫学上においても重要であることが示唆された。H25年度は、臨床上切り札的抗菌薬と考えられているカルバペネム系薬に関する薬剤感受性・耐性機序に関して検討を行った。既存の知見では抗菌薬に高度の耐性を示すAcinetobacter属菌はA. baumanniiであり、特にST92に属する菌株がその傾向が強いと報告されてきた。しかしながら、本研究ではカルバペネム系薬であるメロペネムに最も多く耐性を示した菌種はA. soliであり、次いでA. ursingiiであり、新たな知見をもたらした。これらカルバペネム系薬に耐性を示したA. soli、A. ursingiiの耐性機序は解析の結果メタロβラクタマーゼであるIMP-1が主要因であることが判明した。IMP-1はプラスミド上に存在することが推測されることから本知見は感染対策上の重要な知見にもなり得る。H26年度は上記知見を踏まえ、市中における血液培養分離株で検討を行った。結果としてはA. baumanniiの分離頻度が高く、イミペネムに耐性を示した株はOXA-51-likeによる機序が推測され、大学病院と市中では異なる結果となった。本研究はAcinetobacterの菌種レベルでの耐性機序を明らかにするきっかけとなった研究であり、耐性機序別に治療を考える場合の重要な知見となった。
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