研究課題
市中感染型MRSA(community-acquired MRSA; CA-MRSA)の定義は、米国 (CDCの定めた臨床的定義しかないため、細菌学的特徴と乖離することが多く、疫学調査や、臨床の現場においてCA-MRSAの判定に混乱を来している。そこで、厳密にCA-MRSAの臨床的定義を満たす株について、耐性遺伝子解析、分子疫学的解析、病態解析を行い、CA-MRSAの細菌学的特徴を明らかにすることを目的とし、CA-MRSAの収集を行った。2012年10月から2013年9月までに東北大学病院および関連施設で分離された各患者のMRSA初回分離株のうち遺伝子学的にMRSAと同定された231株を対象として、CDCの定義によるCA-MRSAと HA-MRSAの臨床的分類、SCCmec領域の型別によるCA-MRSAと HA-MRSAの細菌学的分類を行った。PVL産生遺伝子とACME関連遺伝子の検索を行った。さらにPOT法によるCA-MRSAとHA-MRSAのPOT分類、菌染色体のopen reading frame領域の違いに基づくクローン識別、MLST法、およびPFGE 法により分子疫学的解析を行った。対象231株のうち、CDCの定義による臨床的CA-MRSAは28株 (12.1%)、SCCmec型による細菌学的CA-MRSAは78株 (33.8%)であった。PVL産生遺伝子陽性株は3株、ACME遺伝子陽性株は1株のみであった。POT解析では、4株を除いてPOT分類によるCA-MRSAとHA-MRSAの判定はSCCmec型別試験によるものと一致した (98.2%)。また231株のMRSAは88種類のクローナル・グループに分別され、そのうち30種類のクローナル・グループ (34.1%)が細菌学的CA-MRSAであった。細菌学的CA-MRSAで最も多く検出されたクローンはMLST解析によりこれまで本邦で報告のされたことのないST5-SCCmecⅣの遺伝子型のMRSAクローンであった。POTで分別されたCA-MRSAクローナル・グループの間にはPFGE解析によって4通りの組み合わせで高い相同性が見られた。本邦で分離されるMRSAの細菌学的特徴や、分子疫学的解析による遺伝子学的な集団構成が判明した。
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