研究実績の概要 |
2002-2012年の11年間に発症したリンパ腫3043例(B細胞性リンパ腫(77.1%)、T/NK細胞性リンパ腫(16.9%),ホジキンリンパ腫(5.0%))について臨床病理学的解析を行った。年齢中央値67才、2002-2008年と2009-2012年を比較すると60歳以上初発例の増加を認めた(61.5% vs 66.8%, p=0.007)。組織型ではDLBCL(1,173例,38.6%),ろ胞性リンパ腫(598例,19.7%),MALTリンパ腫(227例,7.5%)と続き、疾患頻度は以前の報告と概ね一致していた。 最多病型であるDLBCLでは,発症年齢中央値70歳であり、男女比1.1:1であった。Hans’ criteria分類では、GCB型39%、non-GCB型60%であった。転写抑制因子であるBACH2はB細胞分化に関わる因子であり、MYC陽性DLBCL難治例にBACH遺伝子再構成が同定されている。我々は、BACH2発現の臨床的意義を検証するためにDLBCL 95症例を対象に解析を行い、MYC転座陽性群では高率(79%)に、BACH2陽性例を認め、さらに、MYC転座陽性DLBCL群において、BACH2陰性群では陽性群に比して予後良好であることを明らかにした(3年全生存率75% vs 20%)。BACH2発現がMYC転座陽性DLBCLの病態に関与しているという仮説を支持するものであり、BACH2遺伝子の腫瘍進展における役割についてはさらなる解析が必要である。EBV関連NK/T細胞リンパ腫では、発症年齢中央値66才であったが、発症年齢分布では30才代を中心とした若年者と60-70才代を中心とした2群に分かれることが明らかとなり、若年群では全体の臨床病理学的特徴は概ね同等であるにも関わらず、治療抵抗・再燃例が多く、L-asparaginase療法による寛解導入と同種移植の有用性、EBV-DNA定量値が予後と相関することを報告した。免疫不全関連リンパ増殖性疾患では、関節リウマチに関連したとされるMTX-LPD 17例の臨床病理学的解析を行い、リツキシマブ療法がMTX-LPDのみならず、原疾患であるRAの疾患活動性長期コントロールにも重要であることを報告した。
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