研究課題
細菌感染症の原因菌を確実かつ迅速に同定することは早期に有効な治療を開始するために必須である。従来、コロニーからの細菌同定には形態学的・生化学的手法が用いられてきたが、長時間を要し(平均24時間)、操作が煩雑で熟練を要するなどの難点があった。近年、プロテオーム解析技術の進歩が目覚ましい。最近、質量分析法による細菌のプロテオーム解析が細菌の種レベルの同定に有用であることを確認した。本法は1菌種約6分ときわめて短時間に正確な同定結果が得られる。本法により同定検査だけでなく、薬剤感受性試験、血液培養陽性ボトルの迅速同定検査、尿路感染症では培養なしに直接尿検体からの同定検査への応用を目的とする。26年度はStaphylococcus aureusのメチシリン感受性株(MSSA)とメチシリン耐性株(MRSA)の迅速同定を試みた。従来の薬剤感受性試験は最新の自動分析装置を用いたとしても平均約24時間と長時間を要する。質量分析計を用いることで約5分で結果が得られ、適切な抗菌薬で早期治療が可能となる。S. aureusのメチシリン感受性株(MSSA)とメチシリン耐性株(MRSA)を同定するデータベースはMALDI Biotyper databaseに登録されていないため、独自のデータベースを構築する必要がある。まず当院検査部細菌検査室に保存してあるMSSA及びMRSAを各50株使用してデータベースを構築した。その後ルーチン検査で分離された臨床分離株60株使用して構築したデータベースを前向きに検証した。24・25年度は、血液培養陽性ボトルの迅速同定検査、尿路感染症では培養なしに直接尿検体からの同定検査を構築し、臨床応用を可能にした。
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Clinical Proteomics
巻: 12 ページ: 1
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Clinica Chimica Acta
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