研究課題/領域番号 |
24590684
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
森下 英理子 金沢大学, 保健学系, 教授 (50251921)
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研究分担者 |
高見 昭良 金沢大学, 大学病院, 准教授 (80324078)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘムオキシゲナーゼー1 / 同種骨髄移植 / 移植関連合併症 |
研究概要 |
先行研究により、HO-1の遺伝子多型(SNP)が造血幹細胞移植治療成績と関連があることを明らかにした。そこで、本年度研究では以下の検討を行った。 (1)HO-1遺伝子多型とHO-1活性の強弱について、検討した。HO-1プロモーター領域-413に位置するA/TのSNPを解析し、A/AあるいはT/Tホモ接合体を有する健常者リンパ球よりEBウィルス形質転換B細胞株(LCL)を作成し、酸化ストレスとしてヘミン100μMを添加して、HO-1 mRNA発現量を比較した。A/Aホモ接合体LCLの方が有意にHO-1発現量が増加しており、Aアレルを有するドナーの移植後生存率が有意に良好であった理由の一つと考えられた。 (2)血管内皮細胞障害に対して、HO-1/COがADAMTS-13やvon Willebrand因子(vWF)のmRNA発現に影響を与えるかどうかについて検討した。血管内皮細胞株Eahy926細胞にリポポリサッカライド(LPS)刺激を加えると、vWFの発現が増加してADAMTS-13が低下するためvWF/ADAMTS-13比は増加した。一方、あらかじめ一酸化炭素(CO)誘導剤であるCORM-2(50μM)を添加しておくと、vWF/ADAMTS-13比は有意に低下し、血栓傾向が改善された。 (3)日本骨髄移植推進財団から入手した非血縁者間同種骨髄移植患者とドナーのDNAを用いて、トロンボモジュリン 2729A→C (3’-untranslated region)のSNP(rs3176123)と移植治療成績との関連を検討した。その結果、低リスク患者群において、Aアレルを有するドナーの慢性GVHD発症率が有意に低下していた(P<0.04)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)血管内皮細胞株Eahy926細胞を用いたin vitroの検討:COをあらかじめ投与することによって、vWF/ADAMTS比が低下し血管内皮細胞障の改善を示した所見は、HO-1/COの血栓傾向改善効果を示した画期的な結果と言える。 (2)日本骨髄移植推進財団から入手した非血縁者間同種骨髄移植患者とドナーのDNAを用いて、トロンボモジュリン 2729A→C (3’-untranslated region)のSNP(rs3176123)と慢性GVHDとの関連性を明らかにした点は、移植関連合併症予防あるいは治療につながる新しい発見である。 一方、GVHD発症造血幹細胞移植モデルマウスを作成し、HO-1による発症予防効果を検討する計画に関しては、現時点ではまだ動物実験には着手できていない。しかし、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に放射線照射をして、凝固線溶系因子の発現を検討するin vitro実験を代わりに行っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、GVHD発症造血幹細胞移植モデルマウスを用いたHO-1による発症予防効果の検討を実施する。 (1)GVHD発症造血幹細胞移植モデルマウスの作成: C57Bl/6(H-2b)マウスをドナーマウスとして用い、脾細胞(5×106個/匹)と大腿・脛骨より骨髄細胞(5×106個/匹)を採取する。採取した細胞を、14Gyの放射線照射を行った雌 B6D2F1(H-2bxd)マウス(移植マウス)の尾静脈内に移植する。 (2)ドナーマウス造血幹細胞ならびに移植マウス血管内皮細胞のHO-1発現状況に応じて、4群:(A)無処理群、(B) HO-1高発現ドナーマウス造血幹細胞群、(C) HO-1高発現移植マウス内皮細胞群、(D) HO-1高発現ドナーマウス造血幹細胞・移植マウス内皮細胞群、を作成し、以下の(a)~(e)の項目について4群を比較検討する。(a)GVHDの評価、(b)血液検査:採血した検体を用いて、①血小板数、白血球数、②炎症性サイトカイン、③血管内皮傷害マーカー、④凝固・線溶系マーカー(全てELISA法)、⑤リンパ球サブセット(フローサイトメトリー)を測定、(c)各種臓器(肝臓、腎臓、小腸)におけるHO-1および凝固・線溶系因子のmRNA・蛋白発現、(d)臓器障害の評価:移植マウスの小腸、腎臓、肝臓を切除して組織切片を作成し、肝臓:①H&E染色、②免疫組織染色にて血管壁へのリンパ球接着、小胆管壁へのリンパ球浸潤を計測、腎臓:①H&E染色、②PTAH染色にて腎糸球体におけるフィブリン沈着の程度、小腸:①H&E染色にて傷害の程度を各群間で比較検討、(e)生着率の評価:移植後14日と30日目に末梢血単核球を採取し、FITC-H-2b抗体(ドナータイプ)およびPE-H-2d抗体(レシピエントタイプ)を用いてフローサイトメトリーにて検出。
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次年度の研究費の使用計画 |
GVHD発症造血幹細胞移植モデルマウス研究に際して、実験用マウス;C57Bl/6(H-2b)、B6D2F1(H-2bxd)、病理標本作成のための関連試薬、注射器・留置針・麻酔薬など、凝固線溶系因子ELISA測定キット、ウエスタンブロッティング関連試薬、RNA抽出キット、Real time PCR関連試薬などの購入費として使用。
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