研究課題
造血幹細胞移植後合併症の発症には移植前処置である放射線照射や免疫抑制剤の投与による内皮細胞傷害が関与していると考えられているが、有効な治療法は未だ確立されていない。今回の研究では、移植前処置の一つである放射線照射が血管内皮細胞に与える影響を明らかにするために、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に放射線照射を行い、放射線傷害時の血管内皮細胞上のHO-1と血液凝固・炎症関連因子の遺伝子発現をさらに詳細に検討した(H25年度研究の継続)。検討の結果、放射線照射によって組織因子(TF)messenger RNA(mRNA)発現量は照射3時間後に約1.7倍に増加、トロンボモジュリン(TM)は約0.6倍に減少、intercellular adhesion molecule 1(ICAM-1)は約2倍に増加、interleukin 6(IL-6)は照射3時間後に約1.8倍に増加した。HO-1は3時間後に増加傾向を示したが、統計学的には有意ではなかった。以上の結果より、放射線照射後の血管内皮細胞では、内皮細胞傷害による凝固・炎症亢進が起こるが、HO-1は有意な変動を示さないことが明らかになった。次に、放射線刺激時の血管内皮上のTMの機能を検討する為、HUVECにsmall interfering RNA(siRNA)を導入してTM遺伝子発現を抑制し、同様に放射線刺激を加えた際に起こる影響を検討した。その結果、TM遺伝子抑制時の凝固・炎症関連因子のmRNA発現量はTM遺伝子非抑制細胞と有意差を生じなかった。以上より、血管内皮上のTMは単独では放射線照射直後の凝固・炎症動態には関与していない可能性が考えられた。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (21件) (うち招待講演 13件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)
Thromb Res
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.thromres.2015.03.023.
J Atheroscler Thromb
Neurology and Clinical Neuroscience
10.1111/ncn3.156
臨床検査
巻: 58 ページ: 979-987
日本臨床
巻: 72 ページ: 1237-1242
日本血栓止血学会誌
巻: 25 ページ: 725-731
救急・集中治療
巻: 26 ページ: 851-855
巻: 26 ページ: 929-934