研究実績の概要 |
本研究は震災被災地において深部静脈血栓症(Deep vein thrombus:以下DVT)の検出を目的とした下肢静脈エコーと血液凝固線溶機能検査を実施し,被災環境がエコー所見に及ぼす影響を検討する.平成27年度は過去3年に引き続き,10月10日と11日に宮城県亘理郡(亘理町,山元町)の仮設住宅並びに在宅被災者247名(男性69名,女性178名,年齢69.8±11.3歳)を対象に検査を実施した.背景因子は高血圧48.6%,糖尿病15.8%,脂質異常症49.8%で,脂質異常症は24年度(29.6%)と比較し25年度(47.8%),26年度(55.3%)と同様高い検出率を示していた.DVTは27名(11.0%)で,24年度(4.5%),25年度(8.3%),26年度(10.3%)と右肩上がりの上昇は継続していた. 凝固線溶機能では過去3年に引き続きD-dimerとPAI-1を任意で計測した(113名).このうちD-dimerはDVTなし群(0.39±0.43ng/dl), 新鮮DVT群(0.54±0.50ng/dl),陳旧性DVT群(0.47±0.58ng/dl)とも有意差はなかったが,PAI-1はDVTなし群(23.2±11.7ng/dl)に対し, 新鮮DVT群(30.0±29.5ng/dl),陳旧性DVT群(35.3±39.1ng/dl)で上昇傾向を認めた.上記の点を日本集団災害学会や日本栓子検出と治療学会で発表した. また被災地でのDVT検出に下腿静脈の拡張所見が関与することを下記の医学雑誌に報告した. 前田文江,山村修ほか,被災地検診活動から得られたヒラメ静脈径拡張の関連因子について,医学検査65(1),p25-31, 2016
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