研究課題/領域番号 |
24590686
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
糟野 健司 福井大学, 医学部, 准教授 (60455243)
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研究分担者 |
岩野 正之 福井大学, 医学部, 教授 (20275324)
木村 秀樹 福井大学, 医学部附属病院, 准教授 (20283187)
高橋 直生 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (30377460)
中村 肇 公益財団法人田附興風会, 医学研究所第8研究部, 研究員 (70303914)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酸化ストレス |
研究概要 |
急性心筋梗塞、脳梗塞、急性腎障害などの虚血性疾患は酸化ストレスが重要な基盤病態と考えられている。ところが、現在の臨床現場では、酸化ストレスを定量的に測定するツールが存在しないことからこれら疾患の早期診断や予防対策を講じることが不可能である。 そこで本研究では平成22年度挑戦的萌芽研究採択課題で発見した急性腎障害での超早期の尿中TRXの特異的上昇という生体レドックス反応を応用発展させ、酸化ストレスに特異的な新規の迅速レドックス診断法を開発し、虚血・酸化ストレス関連疾患の早期診断のためのツール開発を目的に研究を行っている。今年度は主に培養細胞での基礎実験を行った。 ヒト尿細管上皮細胞(PTEC)を通常の培養液で培養し、過酸化水素水、リポポリサッカライドを添加し、培養液上清をサンプルとしてTRXが酸化ストレスを特異的に検出できるか調べた。TRXは過酸化水素水の添加により3時間で用量依存性に、培養液上清に増加したが、リポポリサッカライドでは上昇しなかった。また細胞内のTRX蛋白量やmRNA量を測定することでTRX上昇のメカニズムを調べた。細胞内ではTRXは過酸化水素水の添加により3時間で用量依存性に減少したが、リポポリサッカライドでは減少しなかった。免疫染色法で培養細胞内のTRXの染色を行ったが、TRXは過酸化水素水の添加により3時間で細胞内で減少することが再確認できた。細胞内のTRXmRNA量を過酸化水素水の添加後継時的に観察したが、培養液上清に増加した3時間では上昇せず、12時間後までは上昇しなかったが、24時間目には増加した。 以上の観察から過酸化水素水の添加3時間での培養液上清のTRXの増加は細胞内で新たに合成されたTRXではなく、既に細胞内に存在していたTRXが過酸化水素水の添加で細胞外へ放出された可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では平成24年度にはインビトロ分析を主に行う予定であった。インビトロ分析では細胞刺激に用いる各種薬剤の量により細胞毒性が前面に出て目的の計測が出来ない可能性が危惧されたが、用いる薬剤濃度や刺激時間、培養条件を整えることに予想以上の時間を費やした。条件設定には多くの論文を参考にし、各論文で作用されている条件を基にしたが、用いる細胞の種類や培養液が異なるため独自の条件設定が必要であった。最終的にはアッセイが成立する適切な条件を見つけることが出来、この条件下で様々な実験を行うことで過酸化水素水の添加3時間で培養液上清のTRXの増加が濃度依存性に確認でき、この増加は細胞内で新たに合成されたTRXではなく、既に細胞内に存在していたTRXが過酸化水素水の添加で細胞外へ放出された可能性が観察出来た。 研究がやや遅れている最大の理由として、本研究課題発案の礎となった「急性腎障害での超早期の尿中TRXの特異的上昇」について論文投稿作業が挙げられる。現在論文投稿を行っているが、海外の査読者から尿中TRXの由来についていくつかの厳しい意見が寄せられた。これらの厳しい意見に対し追加実験をいくつか行ったことがやや遅れている最大の原因と考えられる。さらに論文手直しなどの対応に相当な時間が盗られてしまい、当研究の進捗が妨げられている。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿作業中の「急性腎障害での超早期の尿中TRXの特異的上昇」についての論文が受理されれば本研究に労力を集中することが出来るようになり、今後の研究を推進することが出来る。査読者から意見のあった尿中TRXの由来についていくつかの追加実験はほぼ終了しており、今後は論文の手直しを残すのみとなっている。 今後、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を用いたTRX迅速測定法の開発において、アルカリフォスファターゼ(ALP)標識抗TRX抗体とビオチン標識抗TRX抗体を用いたサンドイッチアッセイによって固相フィルター上にTRX抗原をトラップし、その後ALPの基質である発光基質を固相フィルターに添加することによって、発光シグナルが得られることを確認する。発光量は光電子倍増管(PMT)を用いて検出し、まずは検量線を得ることを目標に研究を進める。 今後の研究の推進策として、サンプル採集を福井大学腎臓内科受診者より静脈血採血と尿採取、凍結保存を行い、上記のTRX迅速測定法の開発と同時並行的に進めることで研究期間の短縮を図り遅れを取り戻すことを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度繰り越し分と25年度の研究費を用いて化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)を用いたTRX迅速測定法の開発や周辺の基礎実験に必要な抗体、試薬、細胞培養実験用の消耗品購入に充てる。
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