研究課題/領域番号 |
24590690
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
永田 浩三 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20378227)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メタボリック症候群 / 高血圧 / 心筋リモデリング / 左室拡張障害 / 脂肪組織 / グルココルチコイド / 酸化ストレス / 炎症 |
研究概要 |
GR遮断薬であるRU486はDahlS.Z-Leprfa/Leprfa(DS/obese)ラットの体重、摂食量、及び収縮期血圧の上昇に影響を及ぼさなかった。RU486によりDS/obeseラットの心、左室、及び腎の重量は変化しなかったが、肝、後腹膜脂肪(内臓脂肪)、及び鼠径部脂肪(皮下脂肪)の重量は有意に減少した。心エコー及び心臓カテーテルにおいてRU486により左室拡張機能指標の有意な改善が認められた。心筋病理ではRU486により左室心筋細胞のサイズは変化しなかったが、左室心筋の線維化は有意に減少した。また、心筋ではRU486によりジヒドロエチジウム染色により示される活性酸素の蓄積、NADPHオキシダーゼ活性、及びCD68の免疫染色で示されるマクロファージの浸潤がいずれも有意に抑制された。後腹膜脂肪では脂肪細胞サイズとマクロファージの浸潤がいずれも有意に抑制された。心筋では、RU486により肥大関連遺伝子(ANP、BNP)の有意な変化はみられなかったが、線維化関連遺伝子(I/III型コラーゲン、CTGF)、NADPHオキシダーゼのサブユニット(p22phox、gp91phox)、炎症関連遺伝子(MCP-1、COX-2、TNF-α)、及びGRの遺伝子発現の有意な低下が認められた。また、後腹膜脂肪でもRU486により炎症関連遺伝子の有意な低下がみられた。尚、RU486は対照動物であるDahlS.Z-Lepr+/Lepr+(DS/lean)ラットの心臓及び脂肪の形態、機能、及び遺伝子発現等に影響を及ぼさなかった。これらの結果は本メタボリック症候群モデルではグルココルチコイド/GRシグナルの活性化が心筋の酸化ストレス、炎症、線維化、及び拡張障害や脂肪の炎症に一定の役割を果たすことを示す重要な新知見であり、GR遮断の予防的及び治療的有用性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DS/obeseラットに対するRU486の投与により惹起された心筋および脂肪の形態、機能、及び遺伝子発現等の結果より、本モデルの基本病態と心筋傷害及び脂肪組織機能異常におけるグルココルチコイド/GRシグナル活性化の病態生理学的役割がかなり明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
1)DS/obeseラットの基本病態におけるグルココルチコイド/GRシグナルの病態生理学的意義をさらに明らかにするため、インスリン感受性及び糖脂質代謝を調べるとともに、ウエスタンブロット解析を行う。これらのデータに基づき、平成25年度に学会発表及び論文投稿を行う予定である。 2)平成25年度は、平成24年度の研究成果に基づき、ストレス応答におけるグルココルチコイド/GR及びノルエピネフリン/βアドレナリン受容体の役割について詳細な検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)のために、平成24年度の直接経費の残金分を充てる。 2)は、平成25年度の交付金額を使って実施する。
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