研究課題/領域番号 |
24590692
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
和田 英夫 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40158704)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | モニター / 抗Xa活性 / 血栓予防 |
研究概要 |
整形外科術後におけるフォンダパリヌクスならびにエドキサバン投与症例について、抗Xa活性を測定し、その有用性を検討した。抗Xa活性は体重や体表面積ならびに腎機能と相関した。術後1日目の抗-Xa活性は出血に関係したが、血栓症発症とは有意な関係を認められなかった。術後4日、8日の抗Xa活性は、出血や血栓症の発症と有意な関係を示さなかった。また、同時に可溶性フィブリン(SF)、D-dimer、フィブリノゲンならびにフィブリン分解産物(FDP)も測定し、これらの増加は血栓症の診断に有用であったが、抗凝固薬投与例ではその有用性が消失した。一方、FDPやD-dimerの増加は、出血量の多い患者でも認められた。 肝移植症例では、血中のADAMTS13値が低下し、フォンウイルブランド因子(VWF)やVWFプロペプタイド(VWFpp)が増加する。特に血栓性微小血管障害(TMA)などの重篤な合併症が存在すると、それらの異常は著明に増強された。以上から、ADAMTS13、VWF、VWFppはTMAなどの合併症診断に有用な可能性が示唆された。 播種性血管内凝固(DIC)や血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)症例でも、ADAMTS13、VWF、VWFppの変動が著明であり、DICの重症度や病態の解析ならびに予後の予測に有用であることが推測された。 血小板膜糖蛋白VI(GPVI)の測定系を確立し、DICやTTPなどの疾患で有意に増加していることから、血小板活性化の指標として有用である可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
整形外科術後におけるフォンダパリヌクスならびにエドキサバンのモニターは、抗Xa活性測定により、可能であった。統計解析をするために十分な症例数を集積した。その結果、抗Xa活性の測定は出血の副作用の予測に有用であった。また、同時に可溶性フィブリン(SF)、D-dimer、フィブリノゲンならびにフィブリン分解産物(FDP)を測定することにより、出血や血栓症発症予測に有用であることも証明できた。 肝移植症例では、血中のADAMTS13値、VWF やVWFpp がTMAなどの重篤な合併症の診断に有用な可能性が示唆された。現在症例数が十分でないので、統計学的に有意差を証明できる程度の症例数を集める予定である。 DIC やTTP などの症候群でも、ADAMTS13、VWF、VWFppの測定が、DICの診断ならびに重症度や病態の解析ならびに予後の予測に有用であることが推測され、さらに症例の集積を始めている。また、GPVIやマイクロパーティクルなどの新しいモニターの測定系を確立し、DICやTTPなどの診断に有用であり、血小板活性化が種々の血栓症発症に関与している可能性を示せた。 これらのモニター法の確立ならびに解析により、新しい血栓症治療薬ならびに予防薬の開発の可能性も示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
整形外科術後における抗Xa活性のモニターは、エドキサバンに対して行う。現在、完璧なエドキサバンの抗Xa活性測定系は確立されていないので、Sー2222以外の発色基質を用いて、測定系を確立する。低分子ヘパリンやフォンダパリヌクス投与例における抗Xa 活性の測定においては、測定系にATが存在したほうがよいか否かも検討する。また、新しい検査の開発も行う。 肝移植では症例数を増やして、さらに血中のADAMTS13値、VWF値やVWFpp値などとTMAなどの重篤な合併症との関係を検討する。さらに新しいマーカーの開発も行う予定である。 DIC やTTP などの症候群でも、さらに症例の集積を行い、従来の止血系マーカーに加えて、GPVIやマイクロパーティクルなどの新しいモニターの測定系を確立し、DICやTTPなどの診断を確立させる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に、抗Xa活性、ADAMTS13活性、VWF、VWFpp、SF、D-dimer、GPVIなどの測定のための、消耗品購入などにあてる。また、PセレクチンなどのELISAキットの購入にも使用する。 また、学会などでの情報収集や発表を積極的に行うために、学会出張のための旅費や宿泊費にも使用する。 さらに、英文校正や掲載料などにも一部使用する。
|