研究課題
基盤研究(C)
日本の研究施設で行われる希少疾患に対する分子遺伝学的検査の質を確保するためのガイドラインを日本人類遺伝学会と協力して作成したが、それに引き続いて、次世代シーケンサにおけるIF(Incidental Findings)の分類および取扱についての世界的な状況について調査した。ある提案では、どのような疾患の遺伝情報を“生命を脅かす可能性が大きい”とするのか、また“被検者が非開示を希望しない限り”としているが、どのようなInformed Consent(IC)の取得が適切なのかは示されていない。現時点では、IFの精度の担保が困難な場合もあるため、IFは原則非開示とするというIC取得のもとで研究を実施することが実際的ではある。しかし、今後の次世代シークエンサーの解析性能の向上等を踏まえ、IFの取り扱いについて更なる検討をすることは必要不可欠と考えられた。いわゆる「遺伝子検査ビジネス」で実施されている遺伝子検査における現状を調査した。特に個人の能力を評価すると謡っているビジネスなどにおいて、対象としている変異(多型)の部位や評価の方法がまったく明らかにされていないものがあったり、常染色体劣性遺伝性疾患の病的変異のヘテロ体に能力の問題があるというような、明らかな科学的誤りも存在することが明らかとなった。臨床的妥当性・臨床的有用性に関する具体的な検討として、(A)HNPCC(Hereditary Non-polyposis Colorectal Cancer)においては、そのスクリーニングとなるマイクロサテライト不安定性検査のみでなく、ミスマッチ修復遺伝子産物の免疫組織染色も併用されることが一般的になってきたことから、免疫組織染色を含めて検討を開始した。(B)MEN1/MEN2に関しては、遺伝学的検査の各500人以上の日本人データを集積し検査の状況や有用性について検討をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した目的は以下のとおりである。「(前半)遺伝性腫瘍、多因子疾患、遺伝性疾患の遺伝学的検査、遺伝薬理学的検査などを臨床現場においてより適切に行うことができるように、分子遺伝学的検査を臨床検査として実施する際に必要とされる分析的妥当性、臨床的妥当性、臨床的有用性の科学的根拠を確立し、その具体的方策と評価に関して、我が国の現状に照らして実現可能な基盤を整備する。(後半)また、急速に発展し、今後の医療を変える可能性のある次世代シークエンサのもたらしうる情報とその問題点や対応策を明らかにし、将来への素早い対応を目指す。」遺伝性主要、多因子疾患、遺伝性疾患の遺伝学的検査に関連する具体的検討を実施することができた。遺伝薬理学的検査に関しては、十分に進展していない。しかしながら、当初25年度以降に実施予定としていた次世代シーケンサに関する検討は予想以上に進展し、具体的なIFに関する検討まで開始されている。
基本的に上記の研究を継続するが、次世代シークエンサに関連する解析情報のフィードバックや臨床応用の可能性に関する基本的な情報収集に基づいて下記4つの状況における検討を実施する。1)まだ原因遺伝子が明らかとなっていない遺伝性の超稀少難病における次世代シークエンサによる解析において、その解析結果のフィードバックに関して、①サンプル提供者(被検者)はどのように考えるか調査をする(インタビューおよび質問紙調査)。②見いだされた変化についてその箇所のSanger法によるシークエンスを実際に行って、解析結果の精度を確認する。2)多因子疾患の易罹患性遺伝子の解析などを次世代シークエンサを用いて行う際に、①どのようなインフォームド・コンセントが考えられうるか(精度などについてどのように伝えることができるか)を検討する。②予期せね重大な情報が得られた際にその結果をどのように取り扱うか検討するグループ(委員会)を組織する。その際に考慮すべき事項について検討する。3)次世代シークエンサが将来的に臨床応用された際の精度管理の在り方、情報の取扱い、妥当性・有用性の検討方法などについて探索的に研究を開始する。4)DTCとして提供されうる次世代シークエンサによる個人シークエンスデータ解析に関する問題点の検討を開始する。
本研究では情報収集と整理が重要となるため、各種学会等での情報収集のための旅費・参加費および、学内での作業を依頼する研究協力者に対する謝金が主体となる。そのほか、収集データの保存・活用のための電子媒体の購入費用、特定のデータベースの使用料などにも研究費を使用する。
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