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2012 年度 実施状況報告書

遺伝学的検査の質と有用性評価に関する研究-次世代シークエンサの臨床応用を見据えて

研究課題

研究課題/領域番号 24590694
研究種目

基盤研究(C)

研究機関京都大学

研究代表者

小杉 眞司  京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50252432)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード遺伝子検査学
研究概要

日本の研究施設で行われる希少疾患に対する分子遺伝学的検査の質を確保するためのガイドラインを日本人類遺伝学会と協力して作成したが、それに引き続いて、次世代シーケンサにおけるIF(Incidental Findings)の分類および取扱についての世界的な状況について調査した。ある提案では、どのような疾患の遺伝情報を“生命を脅かす可能性が大きい”とするのか、また“被検者が非開示を希望しない限り”としているが、どのようなInformed Consent(IC)の取得が適切なのかは示されていない。現時点では、IFの精度の担保が困難な場合もあるため、IFは原則非開示とするというIC取得のもとで研究を実施することが実際的ではある。しかし、今後の次世代シークエンサーの解析性能の向上等を踏まえ、IFの取り扱いについて更なる検討をすることは必要不可欠と考えられた。
いわゆる「遺伝子検査ビジネス」で実施されている遺伝子検査における現状を調査した。特に個人の能力を評価すると謡っているビジネスなどにおいて、対象としている変異(多型)の部位や評価の方法がまったく明らかにされていないものがあったり、常染色体劣性遺伝性疾患の病的変異のヘテロ体に能力の問題があるというような、明らかな科学的誤りも存在することが明らかとなった。
臨床的妥当性・臨床的有用性に関する具体的な検討として、(A)HNPCC(Hereditary Non-polyposis Colorectal Cancer)においては、そのスクリーニングとなるマイクロサテライト不安定性検査のみでなく、ミスマッチ修復遺伝子産物の免疫組織染色も併用されることが一般的になってきたことから、免疫組織染色を含めて検討を開始した。
(B)MEN1/MEN2に関しては、遺伝学的検査の各500人以上の日本人データを集積し検査の状況や有用性について検討をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請書に記載した目的は以下のとおりである。「(前半)遺伝性腫瘍、多因子疾患、遺伝性疾患の遺伝学的検査、遺伝薬理学的検査などを臨床現場においてより適切に行うことができるように、分子遺伝学的検査を臨床検査として実施する際に必要とされる分析的妥当性、臨床的妥当性、臨床的有用性の科学的根拠を確立し、その具体的方策と評価に関して、我が国の現状に照らして実現可能な基盤を整備する。(後半)また、急速に発展し、今後の医療を変える可能性のある次世代シークエンサのもたらしうる情報とその問題点や対応策を明らかにし、将来への素早い対応を目指す。」
遺伝性主要、多因子疾患、遺伝性疾患の遺伝学的検査に関連する具体的検討を実施することができた。遺伝薬理学的検査に関しては、十分に進展していない。しかしながら、当初25年度以降に実施予定としていた次世代シーケンサに関する検討は予想以上に進展し、具体的なIFに関する検討まで開始されている。

今後の研究の推進方策

基本的に上記の研究を継続するが、次世代シークエンサに関連する解析情報のフィードバックや臨床応用の可能性に関する基本的な情報収集に基づいて下記4つの状況における検討を実施する。
1)まだ原因遺伝子が明らかとなっていない遺伝性の超稀少難病における次世代シークエンサによる解析において、その解析結果のフィードバックに関して、①サンプル提供者(被検者)はどのように考えるか調査をする(インタビューおよび質問紙調査)。②見いだされた変化についてその箇所のSanger法によるシークエンスを実際に行って、解析結果の精度を確認する。
2)多因子疾患の易罹患性遺伝子の解析などを次世代シークエンサを用いて行う際に、①どのようなインフォームド・コンセントが考えられうるか(精度などについてどのように伝えることができるか)を検討する。②予期せね重大な情報が得られた際にその結果をどのように取り扱うか検討するグループ(委員会)を組織する。その際に考慮すべき事項について検討する。
3)次世代シークエンサが将来的に臨床応用された際の精度管理の在り方、情報の取扱い、妥当性・有用性の検討方法などについて探索的に研究を開始する。
4)DTCとして提供されうる次世代シークエンサによる個人シークエンスデータ解析に関する問題点の検討を開始する。

次年度の研究費の使用計画

本研究では情報収集と整理が重要となるため、各種学会等での情報収集のための旅費・参加費および、学内での作業を依頼する研究協力者に対する謝金が主体となる。そのほか、収集データの保存・活用のための電子媒体の購入費用、特定のデータベースの使用料などにも研究費を使用する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] High penetrance of pheochromocytoma in multiple endocrine neoplasia 2 caused by germ line RET codon 634 mutation in Japanese patients.2013

    • 著者名/発表者名
      Tsuneo Imai, M.D., Shinya Uchino, M.D, Takahiro Okamoto, M.D., Shinichi Suzuki, M.D., Shinji Kosugi, M.D., Toyone Kikumori, M.D., Akihiro Sakukrai, M.D.
    • 雑誌名

      European Journal of Endocrinology

      巻: 168(5) ページ: 683-637

    • DOI

      10.1530/EJE-12-1106

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Thymic neuroendocrine tumour in multiple endocrine neoplasia type 1: female atients are not rare exceptions.2013

    • 著者名/発表者名
      A Sakurai, T Imai, T Kikumori, K Horiuchi, T Okamoto, S Uchino, S Kosugi, S Suzuki, et al.
    • 雑誌名

      Clinical Endocrinology

      巻: 78 ページ: 248-254

    • DOI

      10.1111/j.1365-2265.2012.04467.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Multiple Endocrine Neoplasia Type 1 in Japan: Establishment and Analysis of a Multicenter Database.2012

    • 著者名/発表者名
      Sakurai A; Suzuki S; Kosug S; Okamoto T; Uchino S; Miya A; Imai T; et al.
    • 雑誌名

      Clinical Endocrinology

      巻: 76 ページ: 533-539

    • DOI

      10.1111/j.1365-2265.2011.04227.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Delay in the diagnosis of multiple endocrine neoplasia type 1: typical symptoms are frequently overlooked.2012

    • 著者名/発表者名
      Yamazaki M, Suzuki SI, Kosugi S, Okamoto T, Uchino S, Miya A, et al.
    • 雑誌名

      Endocrine Journal

      巻: 59 ページ: 797-807

    • DOI

      10.1507/endocrj.EJ12-0071

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical features of insulinoma in patients with multiple endocrine neoplasia type 1: analysis of the database of the MEN Consortium of Japan.2012

    • 著者名/発表者名
      A Sakurai, M Yamazaki, S Suzuki, T Fukushima, T Imai, T Kikumori, T Okamoto, K Horiuchi, S Uchino, S Kosugi, M Yamada, et al.
    • 雑誌名

      Endocrine Journal

      巻: 59 ページ: 859-866

    • DOI

      10.1507/endocrj.EJ12-0173

    • 査読あり
  • [学会発表] 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)について2013

    • 著者名/発表者名
      小杉眞司、村上裕美、鳥嶋雅子
    • 学会等名
      第19回日本家族性腫瘍学会学術集会
    • 発表場所
      別府国際コンベンションセンター
    • 年月日
      20130726-20130727
    • 招待講演
  • [学会発表] MENと診断された方やご家族が医療(者)や遺伝カウンセリングに望むこと:インタビュー調査を通して2013

    • 著者名/発表者名
      鳥嶋雅子,佐藤智佳,浦尾充子,小杉眞司
    • 学会等名
      第19回日本家族性腫瘍学会学術集会
    • 発表場所
      別府国際コンベンションセンター
    • 年月日
      20130726-20130727
    • 招待講演
  • [学会発表] 次世代シークエンサーにおけるIncidental Findingsの取り扱いに関する検討2013

    • 著者名/発表者名
      土屋実央、柴田有花、中國正祥、小杉眞司
    • 学会等名
      第37回日本遺伝カウンセリング学会学術集会
    • 発表場所
      川崎市産業振興会館
    • 年月日
      20130621-20130623
  • [学会発表] 企業が実施している““子どもの潜在能力に関する遺伝子検査”の科学的根拠に関する評価2013

    • 著者名/発表者名
      柴田有花、櫻井晃洋、土屋実央、中國正祥、山内健司、宗林孝明、小杉眞司
    • 学会等名
      第37回日本遺伝カウンセリング学会学術集会
    • 発表場所
      川崎市産業振興会館
    • 年月日
      20130621-20130623
  • [学会発表] 遺伝子検査ビジネスに法規制は必要か?アカデミアの立場から2013

    • 著者名/発表者名
      小杉眞司、柴田有花、土屋実央、中國正祥、鳥嶋雅子、村上裕美
    • 学会等名
      第37回日本遺伝カウンセリング学会学術集会
    • 発表場所
      川崎市産業振興会館
    • 年月日
      20130621-20130623
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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