研究課題
日本の研究施設で行われる希少疾患に対する分子遺伝学的検査の質を確保するためのガイドラインを日本人類遺伝学会と協力して作成したが、それに引き続いて、次世代シーケンサでの所見の取扱いについての検討を前年度に引き続いて実施した。次世代シーケンサにおけるIF(Incidental Findings)の取り扱いについては、米国では、2013年3月のACMG(American College of Medical Genetics)のガイドラインの発表を契機に、議論や研究が活発化しているが、日本では、まだ議論は少なく、IFの取り扱いの実態や考えについても明らかにされていない。国内の遺伝医療専門家間において、次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析でのIFがどのように取り扱われているのか、また、IFの取り扱いに関してどのように考えられているのかについて明らかとするため、臨床遺伝専門医指導医、認定遺伝カウンセラー、および全国遺伝子医療部門連絡会議の担当者に対し、自記式質問票調査による横断研究を行った。対象者約500人に対し、50%を超える回収率を得た。次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析の経験がある者のうち、IFの取り扱いについて何らかの方針を定めているとの回答は3割半ばであることが分かった。一方で、IFの取り扱いに特化した指針の必要性について肯定的な回答は8割以上であった。また、IFの開示に対しては、被検者の年齢によらず、臨床的有用性のあるIFを開示すべきとの意見が主であった。開示に際してあらかじめ被検者の意向を確認する必要性、遺伝カウンセリングを実施する必要性について肯定的な回答はともに9割以上であった。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した目的は以下のとおりである。「(前半)遺伝性腫瘍、多因子疾患、遺伝性疾患の遺伝学的検査、遺伝薬理学的検査などを臨床現場においてより適切に行うことができるように、分子遺伝学的検査を臨床検査として実施する際に必要とされる分析的妥当性、臨床的妥当性、臨床的有用性の科学的根拠を確立し、その具体的方策と評価に関して、我が国の現状に照らして実現可能な基盤を整備する。(後半)また、急速に発展し、今後の医療を変える可能性のある次世代シークエンサのもたらしうる情報とその問題点や対応策を明らかにし、将来への素早い対応を目指す。」当初25年度以降に実施予定としていた次世代シーケンサに関する検討は上記質問紙調査によって予想以上に進展した。
25年度に実施した質問紙調査により、IFの取り扱いに特化した日本独自の指針を作成する必要性が示唆された。開示の方針としては、臨床的有用性のある疾患・遺伝子のリストを日本人に最適化させた形で作成し、リスト上の遺伝子変異はIFとして報告するという方向性が考えられた。開示に際する被検者の意向の確認と、遺伝カウンセリングの実施については必要性が高いと考えられるが、それらのプロセスをどのように実施するかという点は更なる検討が必要であり、また、被検者側がIFについてどのように考えているかを明らかにすることは今後の課題であるといえる。ACMGでは、IF開示についての被検者のオプトアウトを認める方向性でガイドラインの改定が進められている。欧州を含む世界的な状況の調査、最新文献等を基にした論点整理、被検者の考え方に関する調査の検討、日本独自の指針作成についての検討などを実施する。
24,25年度は調査のための協力者に対する謝金以外の費用を可能な限り節減することができたため、最終年度の研究充実のために使用することができるようになった。本研究では情報収集と整理が重要となるため、各種学会等での情報収集のための旅費・参加費および、学内での作業を依頼する研究協力者に対する謝金が主体となる。そのほか、収集データの保存・活用のための電子媒体の購入費用、特定のデータベースの使用料などにも研究費を使用する。
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