1.抗リン脂質抗体症候群の新たな鑑別診断法の確立に関する研究 抗リン脂質抗体症候群(APS)の新たな鑑別診断法の確立を目的に,臨床的に有用性の高い抗リン脂質抗体を複数種・同時に測定できるMultiplex-aPLs-ELISAシステムを確立し,全身性エリテマトーデス患者,原発性APS患者,および健常人を対象に各種合併症の発症に関連性の強い抗リン脂質抗体のタイプを解析した結果,動・静脈血栓症や血小板減少症の発症には,aβ2GPⅠとaPS/PTがそれぞれ独立して関連していた.一方,習慣性流死産の発症には,aCL/β2GPⅠが関与していた. さらに,ループスアンチコアグラント(LA)活性の発現に最も関連していたのはaPS/PTの存在だった.これらの研究成果を基盤として,自動分析装置を用いたMultiplex-EIAにより,迅速かつ簡便に大量検体を処理できる抗リン脂質抗体検査システムを構築した. 2.抗リン脂質抗体症候群の病態発症機序に関する研究 代表的なAPS患者血漿から単離・精製した各種抗リン脂質抗体およびaPS/PTモノクローナルキメラ抗体[231D]を用いた正常ヒト臍帯動脈内皮細胞(HUAEC)および末梢単核球細胞(PBMC)を用いた培養細胞刺激実験系にて,aβ2GPI-IgGとaPS/PT-IgGは,それぞれ単独で細胞表面組織因子(TF)発現,培養液中への炎症性サイトカイン(TNFα・IL-1β)の産生,さらには単球走化性活性化因子(MCP-1)の産生を惹起することを明らかにした.
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