研究課題/領域番号 |
24590697
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
竹内 啓晃 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (90346560)
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研究分担者 |
公文 義雄 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (40215033)
杉浦 哲朗 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (50171145)
森本 徳仁 高知大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (60398055)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / 細胞分裂 / Minシステム / FtsZ / CdrA |
研究概要 |
ピロリ菌は他細菌よりもgenetic diversityが強く機能不明遺伝子も多い。胃内に定着する本菌の増殖様式や細胞分裂も全く不明である。我々が見出したピロリ菌固有のcdrA遺伝子は細胞分裂に関与することが示唆された。一方で正常な細胞分裂に必要で、かつ広く菌種間で保存されている分裂関連遺伝子(ftsZ, minC, minD, minE)もピロリ菌には存在しており、それらのピロリ菌体内での作用機序とcdrA遺伝子機能との関連性も考慮しながら解析を進めている。 数株のピロリ菌からminC, minD, minEをクローニングし、その塩基配列を大腸菌と比較した結果、minC は20%程度、minDとminEでも50%程度の相同性しか認めなかった。ピロリ菌株間では90%以上の高い相同性を示した。 ピロリ菌の細胞増殖・分裂における各遺伝子機能を解析するためHPK5株で各遺伝子(minC, minD, minE)の破壊株をKmrとCmr遺伝子挿入により作成した。全ての破壊株で菌体は有意に伸長化するがΔminE株はその中でもあまり伸長化しなかった(ΔminD株が最も伸長化)。しかし、定常期以降で出現するcoccoidの出現が遅延しCFUも確認された。また全株とも分裂は行われていたが、電子顕微鏡観察でその分裂部位がΔminC株とΔminD株では大きく中心部からずれており、分裂部位の制御が破綻していると考えられた。 以上より、3遺伝子とも菌体長軸形成に影響すると共に、minEはcoccoid形成、minCとminDは分裂部位の制御に関与すると思われ大腸菌とは全く異なる作用機序と考えられた。さらに、double破壊株(minCDとminDE)が作成できたので、ftsZやcdrAと共に本菌固有の細胞分裂について詳細な機能解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピロリ菌の細胞分裂に関する報告はなくゲノム解析による機能予測だけであったが、我々はピロリ菌固有の細胞分裂の機序を解明しつつある。現在までに、概要に記述したように、ピロリ菌のminシステムの作用は大腸菌とは全く異なる可能性を示した。minC, D, Eは共に正常形態形成に必要であることが判明したが、特にminEがピロリ菌のcoccoid(球状化)に関与する可能性はその生物学的動態(「生」と環境応答による「死」あるいは「休眠」)や感染様式の解明に重要な知見である。また電子顕微鏡学的解析により、minEは分裂部位の制御には関与せず、minCやminDが関与することはこれまでに報告がなく、ピロリ菌固有の細胞分裂機序を除々に明らかにしている。さらに解析を進めるために複数の遺伝子破壊株の作成に取り組み、予想以上に時間を費やしたが、想定外の電子顕微鏡解析を実施するなど計画以上の進展もあった。
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今後の研究の推進方策 |
複数の遺伝子破壊株が作成できたため、ピロリ菌におけるminシステム(minC, D, E)の固有の作用機序を詳細に解析する。また、各遺伝子破壊株にてFtsZとCdrAの発現や細胞内局在の解析を行いminシステムとの分子相互作用の解析を予定通りに進める方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ピロリ菌固有の細胞分裂を解析するに当たり、種々の遺伝子破壊株の作成は重要であり、遺伝子組み替えにより破壊株の作成に取り組んだ。単独の遺伝子破壊株の作成は想定内の時間で作成できたが、生命の根幹に関わる細胞分裂関連遺伝子の複数破壊株の作成には予想以上の時間を費やす結果となり進行がやや遅れ研究費の一部を繰り越すことになった。 次年度は作成した各種の遺伝子破壊株(特に複数遺伝子破壊株)の確認作業を終了させること、およびこれらの遺伝子破壊株(変異株)を中心に解析(遺伝子解析および分子生物学的解析など)を行い細胞分裂の機序解明に向けて研究を遂行する。
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