研究実績の概要 |
胃内に持続感染するピロリ菌はgenetic diversityが強く機能不明遺伝子も多く、増殖様式や細胞分裂機序も不明である。我々が発見した本菌固有cdrA遺伝子が存在する一方、分裂関連遺伝子(ftsZ, minC, minD, minE)も存在する。そこで、それらのピロリ菌体内での作用機序を解析した。 各min遺伝子破壊株を作成し比較解析(形態・増殖・CFU)した結果、全破壊株で有意に菌体が伸長化した(ΔminD株が最も伸長化)。ΔminE株は定常期以降のcoccoid出現が遅延しCFUも確認された。全破壊株とも増殖・分裂は野性株と同様だが、電子顕微鏡観察でΔminC株とΔminD株は分裂部位が中心を外れていた。すなわち、3遺伝子とも菌体長軸形成に影響し、さらにminEはcoccoid形成、minCとminDは分裂部位の制御に関与すると考えられた。さらに、double破壊株(minCDとminDE)は著しいviabilityの低下を認め菌体の生命維持に影響した。 各抗体(His融合蛋白を作成し抗原として使用)を作成して菌体内の分布および分子間相互作用を解析した。免疫沈降ウエスタンブロット解析からFtsZと各Min蛋白の菌体内結合を証明しMin蛋白間でも菌体内結合を認めた。これらの分子間結合における他の介在分子の必要性は今後の解析が必要である。H26年度は特に免疫染色にて各Min蛋白とFtsZの菌体内分布を解析した。ΔminE株は野生株と同様であった。ΔminC株は野生株とほぼ同位置にFtsZはリクルートするが強い凝集は見られずdiffuseしていた。ΔminD株は染色体の存在に無関係で菌体内全体にdisperseした。以上より、MinCはFtsZの凝集(Z-ring polymerization)に関与しMinDはnucleic occlusion制御作用を有すると考えた。
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