研究課題/領域番号 |
24590698
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
杉浦 哲朗 高知大学, 教育研究部 医療学系, 教授 (50171145)
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研究分担者 |
公文 義雄 高知大学, 教育研究部 医療学系, 准教授 (40215033)
森本 徳仁 高知大学, 医学部附属病院, 臨床検査技師 (60398055)
高田 淳 高知大学, 教育研究部 医療学系, 教授 (90206748)
竹内 啓晃 高知大学, 教育研究部 医療学系, 講師 (90346560)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 急性冠症候群 / ヘリコバクター・ピロリ / 血小板凝集・活性化 / 菌体膜蛋白 |
研究概要 |
ピロリ菌関連血小板減少性紫斑病の解析から、血小板凝集・活性化を誘導する菌体成分の存在を証明し、その菌体成分(lpp蛋白)を同定した。そこで、国民の約半数が感染しているピロリ菌と死因の上位に位置する心・血管イベントとの関連性を解明することを本研究の目的とした。先ず、リコンビナント融合蛋白(lpp-His蛋白)を作製し、ウサギ免疫後に抗lpp抗体(ポリクローナル抗体)を得て、その特異性等を種々の方法で検証した。結果、作製した抗lpp抗体は目的蛋白であるlpp膜蛋白以外の菌体成分とは交差反応を殆ど示さず、lpp膜蛋白の検出に使用可能と考えられた。 次にlpp-His蛋白を使用して血小板凝集試験を行った結果、菌体破砕物よりもlpp-His蛋白の方が高い血小板凝集を示し、本菌体成分が血小凝集・活性化能を有する事を証明すると共に濃度依存性に活性亢進する可能性および菌体内の活性阻害成分の存在も示唆された。 また、倫理審査委員会承認後、急性冠症候群の患者検体(通常の診療・治療上で得られた血清および血栓および摘出材料(血管)など)を使用してlpp膜蛋白の存在を解析した結果、ピロリ菌感染者の検体に抗lpp抗体と反応する成分の存在が示唆された。陽性反応は現時点ではピロリ感染者のみであり、このlpp膜蛋白の病態発症への関与を強く示唆するのもであった。 さらに、動物感染実験(スナネズミ)より本菌体成分の血中移行性を検証している。また、既存の抗血小板凝集阻害作用を有する治療薬剤あるいは化合物を用いて本菌体成分の血小板活性作用機序を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
死亡原因の上位に位置する心・血管イベント(急性冠症候群:ACS)の病態発症においてピロリ菌感染の関与を解析している。特に、ピロリ菌有するlpp膜蛋白が血小板凝集・活性化を誘導することを証明し、この菌体成分を中心に解析・解明にあたっている。今年度はvitroでのlpp蛋白の血小板への結合および凝集・活性化を確認し、特異性の高い抗lpp抗体の作成ができた。さらに、一部の患者検体(血清)を使用した解析も実施でき、抗lpp抗体に反応する成分を含む検体の存在が明らかとなり、ACS病態におけるピロリ菌の関与が強く示唆される成果を得ており、おおむね予定通りに進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の成果から、lpp蛋白による血小板凝集・活性化には新たに白血球の関与も示唆された。そこで、25年度以降は、このlpp蛋白による血小板凝集・活性化現象の機序を解明するにあたり、白血球の関与も考慮して解析を進める。また既存薬剤等を使用して、その抑制効果を検証すると共に、血小板活性化の分子メカニズムを明らかにする。 vivo解析:一部の患者検体の解析は終了したが、残りの全検体(現在も収集中)についても抗lpp抗体との反応性を解析し、必要に応じてその成分の同定を進める。また、患者血清中のlpp蛋白に反応する抗体の有無についても検証も進める。さらに、ピロリ菌感染動物実験にてlpp蛋白の血中移行性や生体内での血小板動態などの検証を進める。 ピロリ菌感染(特にLpp蛋白)を中心に解析を行い、申請者らが提唱する複合体説に立脚した急性冠閉塞の発症病態と機序を解明する事で、効率の良い治療(除菌前の治療効果予測)と患者予後の改善を最終目標に本研究を遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
急性冠症候群などの血小板凝集・活性化を伴う疾患とピロリ菌感染との関連性を解明するためには、vitroの解析と同時にvivoの解析(患者検体を使用)を行う必要がある。そのためには倫理審査委員会の承認が必要であるが、その申請・承認に些か手間取ったために、患者検体を使用した解析が予定より少し遅延した。また、vivoの解析として感染動物実験も実施しているが施設使用の問題で感染実験の開始がやや遅れた。しかし、それらの問題は全てクリアしたので今後は上述した研究の推進計画に従ってvivo解析も予定通りに進展すると思われる。
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