研究課題
基盤研究(C)
本研究では、予後不良な遺伝子変異 FLT3-ITDを有する白血病細胞における抗がん剤耐性の機序を明らかにするため、骨髄微小環境、特に低酸素状態に着目し、抗がん剤耐性をもたらす遺伝子発現異常について、新たなバイオマーカーとしての意義を明らかとし、それらを指標とした抗がん剤耐性の評価法を確立することを目的とする。本年度は、白血病細胞株K562にFLT3-ITD を導入し、遺伝子発現異常を反映する蛋白のスクリーニングを行った。まず、TOPO TAクローニングキットにて2種類のFLT3-ITDを作製し、それぞれ Neon Transfection systemにてトランスフェクションし、2種のFLT3-ITD 陽性細胞を得た。puromycinにて細胞選択後、FLT3野生型とFLT3-ITDの有無、さらにFLT3リン酸化の状態を、それぞれRT-PCRとウェスタンブロットにて確認した。低酸素(5%)下での細胞増殖は、コントロール細胞で著しく低下したのに対し、FLT3-ITD陽性細胞では抑制されず、低酸素下での細胞増殖能が判明した。これらの細胞での蛋白発現についてプロテオミクス解析を行った。抽出蛋白を2次元-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後のイメージについて、PD Questソフトウエアを用いてコントロール細胞の蛋白発現と異なるスポットを選択し、その蛋白の質量分析結果についてMascot search(Swiss pro データベース)で解析した。その結果、heat shock protein、mitochondrial cytochrome oxylase、eukaryotic translation initiation factorなどの蛋白発現増加が判明した。これらの蛋白は、抗がん剤耐性をもたらす遺伝子発現異常に基づく可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、予後不良な遺伝子変異 FLT3-ITDを有する白血病細胞における抗がん剤耐性の機序を明らかにするため、骨髄微小環境、特に低酸素状態に着目し、抗がん剤耐性をもたらす遺伝子発現異常について、新たなバイオマーカーとしての意義を明らかとし、それらを指標とした抗がん剤耐性の評価法を確立することを目的とする。本年度は、下記のごとく成果が得られ、研究の目的は、おおむね順調に進展していると評価した。すなわち、まず白血病細胞株K562にFLT3-ITD を導入し、2種のFLT3-ITD 陽性細胞を得た。FLT3野生型とFLT3-ITDの有無、さらにFLT3リン酸化の状態を、それぞれRT-PCRとウェスタンブロットにて確認した。低酸素(5%)下での細胞増殖は、コントロール細胞で著しく低下したのに対し、FLT3-ITD陽性細胞では抑制されず、低酸素下での細胞増殖能が判明した。これらの細胞での蛋白発現についてプロテオミクス解析を行った。その結果、有意に発現増加した蛋白が同定できた。これらの蛋白は、抗がん剤耐性をもたらす遺伝子発現異常に基づく可能性が示唆された。
FLT3-ITD導入した株化培養白血病細胞の増殖は、選択後3-4週に低下し、それにともないFLT3リン酸化の状態も低下した。このため、細胞性状の検討は選択後3-4週以内の短い期間に行った。細胞の性状の詳細な検討には、より安定的にFLT3-ITD発現する細胞の作製が必要と考えられ、今後ウイルスベクターの利用を検討する。プロテオミクスのデータにおいて、これらの発現変化した蛋白が安定したものであるか検証が必要である。このため、再現性の確認、ウェスタンブロットによる各蛋白発現の変化、RT-PCRによるmRNAレベルの変化を調べる必要がある。株化培養耐性白血病細胞を用いて、低酸素状態にて、分子薬理学的な耐性機序に関連する遺伝子異常および関連miRNA 発現の解析を行い、耐性機構における遺伝子発現異常との関係を調べる。続いて、本研究者がこれまで一連の研究で明らかにしてきた耐性遺伝子の発現を組合せた真のトランスクリプトーム解析に基づく耐性診断の検出標的として評価を行い、遺伝子発現解析による抗がん剤選択のための遺伝子検査の開発を試みる。
該当無し
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Pediatr Hematol Oncol
巻: 34 ページ: 398-401
Clin Chem Lab Med
巻: 50 ページ: 1665-1670