研究概要 |
本研究では、予後不良な染色体・遺伝子異常、特に FLT3-ITDを有する白血病細胞における抗がん剤耐性の機序を明らかにするため、骨髄微小環境、特に低酸素状態に着目し、抗がん剤耐性をもたらす遺伝子発現異常とそれを制御する関連miRNA分子について、新たなバイオマーカーとしての意義を明らかとし、それらを指標とした抗がん剤耐性の評価法を確立することを目的とする。 本年度は、前年度成果に基づき、FLT3-ITD 導入した白血病細胞株の性状の解析を進めた。FLT3-ITD 導入した骨髄性白血病細胞株K562において、低酸素条件での細胞増殖の安定性の確認を行った。puromycinにて細胞選択した後、FLT3の野生型とFLT3-ITDの状態、さらにFLT3リン酸化の状態を、それぞれRT-PCRとウェスタンブロットにて確認した。細胞の増殖率は、選択後3-4週に低下し、それにともないFLT3リン酸化の状態も低下した。低酸素条件での細胞増殖は不安定であることが判明した。 骨髄微小環境におけるFLT3-ITD陽性白血病細胞の増殖優位性に寄与しうる遺伝子発現を知るため、DNAマイクロアレイ(Human Genome U133 Plus 2.0 GeneChips, Affymetrix 社)を用いた遺伝子発現プロファイリングを行った。2つのFLT3-ITD導入K562において、41,000遺伝子の内、311遺伝子が発現亢進し、18遺伝子が発現低下していた。これらから、細胞増殖、増殖因子受容体、細胞外マトリックス受容体に関連する遺伝子に着目した。細胞増殖関連のFGFR1, IGFBP2, NNMT、RUNX3をコードする遺伝子、キナーゼ型activin受容体、細胞外マトリックスfibronectin受容体、very late antigen (VLA)4受容体などの遺伝子発現の亢進が明らかとなった。 以上より、FLT3-ITD陽性白血病細胞の骨髄微小環境における増殖優位性をもたらす機構の詳細を知る上で有用なマーカーをスクリーニングできた。
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