研究課題/領域番号 |
24590711
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
刑部 恵介 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 講師 (30290167)
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研究分担者 |
吉岡 健太郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (60201852)
橋本 千樹 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (60378049)
西川 徹 藤田保健衛生大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20410714)
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キーワード | 肝硬度測定 / 慢性肝炎 / インターフェロン |
研究概要 |
HBVおよびHCVの持続的な感染によって炎症性変化が強くなり、組織は線維化を来し慢性肝炎から最終病態である肝硬変と進み、最終的には肝細胞癌が生じるようになる。そのため、臨床の場に求められているのは肝組織の線維化を中心とした病態期を正確に診断することにある。しかし、その診断方法は患者への負担が少なく、低侵襲的かつ繰り返し検査可能な事が重要な点として挙げられる。そこで、登場したのが超音波を用いたAcoustic Radiation Force Impulse(ARFI)を用いたVirtual Touch Tissue Quantification(VTTQ)である。VTTQは収束超音波パルスによって組織を歪ませ、そこで生じたせん断弾性波の伝播速度(Velocity of share wave; Vs, m/sec)を測定し『硬さ』として評価する技術であり、生理的条件下で検査可能である。 本研究では、昨年度までに線維化診断に客観性を持たせることを目的に病理組織標本をデジタル化し肝線維化面積を解析した。さらに血液データを収集しデータベースが完成した。そして平成25年度は、それらを基にVTTQによるVs値の有用性を明らかにした。VTTQによるVs値は比較的炎症の影響が少ない事が分かり、より線維化を反映した良い手法であることが明らかとなった。さらに、インターフェロン療法を行った患者に対してVs値の変化について検討を行い、治療効果判定に有用性について検討を行っている。 また、同時にFibroscanの測定も再開する環境が整ったので、以前計測していたB型慢性肝炎に対して核酸アナログ療法を施行した患者の長期観察が可能となった。その結果を用いB型慢性肝炎の治療経過中における発癌予測の検討も開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ARFIを用いたVTTQによる肝硬度(Vs値)について、間接的肝線維化マーカー(血小板、プロトロンビン時間など)や直接的線維化マーカー(ヒアルロン酸など)との比較に加え、線維化面積比を加え比較を行ったところ、Vs値は各種線維化マーカー、線維化面積比と良好な相関関係を証明することができた。また、以前使用されていた肝硬度測定法であるFibroscanは、皮下脂肪の厚い場合や腹水のある患者で計測困難であった。さらに、Fibroscanによる肝硬度は線維化のみならず少なからず炎症の影響を反映した結果であった。しかし、本検討ではVTTQによるVs値は炎症の影響が少ない事が分かり、より線維化を反映した良い手法であることが明らかとなった。これらの結果に関しては共同研究者が論文で公表しVTTQによるVs値測定の有用性が確立できた。 今現在、C型慢性肝炎に対してインターフェロン(IFN)療法を行った患者を対象に経過観察への有用性に対する検討を開始している。本検討ではIFN療法を行っている患者に対して、治療前、治療終了直後、治療後1年、治療後2年にてVs値および血液データなどを測定する。それらの経時的変化を治療効果と比較しVs値の有用性の検討を行っている。治療効果が得られている群では、Vs値も治療直後から低下している。しかし、十分な治療効果が得られていない群ではVs値の変化がみられなかった。 またB型慢性肝炎に対して核酸アナログ療法を施行した患者に対して、発癌した群としていない群に分け、肝硬度を比較している。
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今後の研究の推進方策 |
C型慢性肝炎に対してインターフェロン(IFN)療法は、HCVのジェノタイプに依存することが明らかになっている。そのなかでジェノタイプ1型はIFN治療による効果が得られにくいとされている。そこでジェノタイプ1型に限定して治療効果予測について検討を行う。 またVs値測定の検討と並行して、Fibroscanの有用性も検討を開始する。昨年度よりFibroscanの測定も再開したので、以前のデータに追加して検討を行う。 以前の検討でB型慢性肝炎に対して核酸アナログ療法を施行した患者の経過観察の有用性を検討した。しかし、期間が短かったことから発癌した症例は見られなかった。しかし、最近では発癌した症例が散見されるようになったことから、再度、Fibroscan測定を行い、データ解析を行うことで肝細胞癌の発癌予測の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
血液線維化マーカーであるヒアルロン酸などが、診療医師(共同研究者も含む)からオーダーされる体制が確立されたため、それらの測定を行うために予算建てしていた費用の一部が必要なくなった。さらに、血液データ収集時に共同研究者や連携研究者のサポート体制が充実したことから、データ収集・管理などを行うために予算建てしていた人件費も必要なくなったことが要因と考える。 共同研究者、連携研究者の増加によりデータ入力端末やデータ解析およびデータ管理のためにタブレット型端末やデスクトップPCなどの機器の拡充も行う予定である。
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