研究実績の概要 |
本研究では確立された慢性関節炎モデルSKGマウスを用い、質量イメージング(IMS)法および免疫組織学的手法により関節炎に関連する分子を同定し、その空間的局在性及び量的変動を解析する。SKGマウスは真菌菌体を皮下投与することで関節炎を誘導し、新鮮凍結関節滑膜組織から超切片スライドを作成し、ホルマリン固定後に免疫染色をした。マクロファージやリンパ球などの免疫担当細胞の滑膜組織への浸潤と滑膜組織でのMMP-3,9、TGF-β、VEGF発現の増加を認めた。関節炎を誘導しなかったマウスでは炎症細胞の浸潤、MMP-3,9、TGF-β、VEGF発現の増加は見られなかった。シトルリン化蛋白については、滑膜組織での発現を確認できなかった。現時点では新鮮凍結滑膜組織からIMS用の超切片スライドの作成は、骨組織を含むために困難であった。そのため滑膜組織のみを関節から剥離し超切片スライドを作成する手法を試みた。組織切片の剥離は可能であったが、IMSによる解析は困難であった。また、関節滑膜組織より抽出した細胞内蛋白の発現を関節炎発症群と非発症群とで定量プロテオミクスの手法を用い比較検討した。両群の滑膜組織より抽出した等量の細胞内蛋白を安定同位体で標識された試薬で標識しトリプシン消化した後、質量分析計でピーク強度の差をタンパク質量の差として定量した。その結果、蛋白発現量が2倍以上あるピークを12個見出した。関節炎発症群と非発症群それぞれに発現量が多いピークがあった。これらのピークについて、蛋白の同定を試み、2つのピークはα-enolaseであったが、他のピークに関しては現時点で同定ができなかった。
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