• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

日本人悪性中皮腫に高頻度で見出された3p領域欠損の機能解析と診断への応用

研究課題

研究課題/領域番号 24590715
研究種目

基盤研究(C)

研究機関兵庫医科大学

研究代表者

玉置 知子(橋本知子)  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10172868)

研究分担者 吉川 良恵  兵庫医科大学, 医学部, 助教 (10566673)
森永 伴法  兵庫医科大学, 医学部, 助教 (10351818)
久保 秀司  兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (10441320)
中野 孝司  兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10155781)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード悪性中皮腫 / BAP1遺伝子 / 3p21 / PBRM1遺伝子 / MLPA法
研究概要

日本人悪性中皮腫において高頻度に見いだされた3p21領域の欠損部位に含まれる遺伝子、BAP1の変異状況の確認、および、3p21のBAP1近傍遺伝子欠損と併せて細胞機能への影響を解析した。
悪性中皮腫におけるBAP1遺伝子変異については、欧米では塩基置換による変異が報告されるが、我々の本邦症例の解析では1アレルもしくは両アレル欠損が多く見いだされ、しかも欠損を含めた全体のBAP1変異頻度は欧米よりも数倍高い。定量的PCRで欠損をゲノムレベルで検出するためには高度な技術が必要となり迅速診断には向かないため、ゲノム量を定量的に知ることができるMLPA法での検出が可能かどうかを試みた。その結果、MLPAではBAP1各エクソンについての定量的な解析が可能であることが示された。現在、MLPA診断精度の検討を行っている。
悪性中皮腫では、3p21領域近傍のPBRM1の欠損が見られる症例があることも我々は報告してきた。PBRM1欠損の頻度は、BAP1欠損の頻度よりも低いが、塩基置換例を見出すことができたため、欠損症例にとどまらずPBRM1機能欠損を伴う例がさらに見いだされる可能性がある。
これら2つの遺伝子の機能欠損の影響を見るため、正常中皮由来の細胞株にsiRNAを導入する発現抑制実験を行った。BAP1のsiRNA導入では、予想に反して細胞のapoptosisが引き起こされた。PBRM1のsiRNA導入では、細胞増殖には顕著な影響は見られなかった。しかし、短時間の低濃度処理では、いずれのsiRNA処理でも、DNA修復の遅延傾向が認められた。
一方で、悪性中皮腫患者さんの正常細胞(生殖細胞系列)では、BAP1変異がないことは我々はすでに発表しているが、PBRM1についても生殖細胞系列変異は見いだされなかった。正常対象群の正常ゲノム多型との比較については、現在解析中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. BAP1遺伝子欠損をMLPAで検出することが可能となった。(評価)MLPA法は、迅速なスクリーニング検査として優れている。日本の悪性中皮腫では上皮型が頻度が高くかつ治療への感受性が他の組織型に比べて高い。BAP1遺伝子変異は、この上皮型の80%以上に認められることから、MLPA法の有効性を-シークエンシング法等で検証することで、悪性中皮腫のタイプ診断や早期診断を迅速に実施できる技術となる。よって引き続き解析を続ける必要がある。
2.BAP1近傍の遺伝子変異を検索し、少数例ではあるが塩基置換例を見出した。(評価)PBRM1遺伝子に欠損以外に塩基置換による遺伝子機能欠損がある症例があることが判明した。この遺伝子は腎がんでの欠損も明らかになってきており、今後、悪性中皮腫の発症機構との共通点を明らかにできる可能性がある。またBAP1単独欠損と両方の欠損で臨床症状の違いがあるかどうか、など、臨床面でも評価が必要である。
3.正常中皮細胞株で、BAP1もしくはPBRM1の発現抑制実験をおこなった。(評価)BAP1遺伝子発現抑制により、予想に反してアポトーシスが誘導された。さらに検討が必要である。PBRM1ではそのような影響は見られなかった。2つの遺伝子のそれぞれの発現抑制により、DNA障害の修復に影響がみられたことから、これらの遺伝子のノックダウンはゲノムの不安定性に寄与する可能性が示された。
4.悪性中皮腫患者さんの生殖細胞系列のゲノムを検索した。(評価)悪性中皮腫患者さんの生殖細胞系列(正常細胞)では、3p21の上記2つの遺伝子の欠損等は検出できなかった。患者さんと正常対象群の生殖細胞系列多型の比較解析については、現在患者さんの多型データが出つつあり、検討を続ける必要がある。

今後の研究の推進方策

1.BAP1遺伝子欠損・変異のMLPA法とあわせて、悪性中皮腫の全例で欠損している9p21領域のCDKN2A遺伝子をターゲットとするMLPA法を確立し、悪性中皮腫の迅速診断、および上皮型の迅速診断に発展させる。
2.BAP1、PBRM1の中皮細胞および悪性中皮腫細胞における細胞生物学的な役割を明らかにする。発現抑制、および発現誘導をおこなって評価する。
3.悪性中皮腫患者さんの正常ゲノムと正常コントロール群の正常ゲノムを比較する。悪性中皮腫の「なりやすさ」の指標があるかどうかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

消耗品:分子遺伝学的解析に関わる試薬、培養機材が必要である
コンピューター:24年度にはコンピューターを導入せずに遺伝子解析が可能であったが、本年度にデータ量が多く蓄積され、現有のコンピューターでの解析が困難になる可能性があるため、購入する。
謝金:実験支援者のための人件費、および論文校閲費用を必要とする

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 悪性中皮腫に高頻度に見られたゲノム変異2012

    • 著者名/発表者名
      玉置(橋本)知子,吉川良恵,佐藤鮎子,辻村享,森永伴法,長谷川誠紀,中野孝司
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第57回大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121024-20121027
  • [学会発表] 悪性中皮腫におけるBAP1遺伝子欠失のMLPA法での詳細解析2012

    • 著者名/発表者名
      江見充,佐藤秀則,吉川良恵,森永伴法,佐藤鮎子,久保秀司,辻村亨,長谷川誠紀,中野孝司,玉置(橋本)知子
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] BAP1遺伝子の上皮型悪性中皮腫での高頻度欠失2012

    • 著者名/発表者名
      吉川良恵,江見充,森永伴法,久保秀司,佐藤鮎子,辻村亨,長谷川誠紀,中野孝司,玉置(橋本)知子
    • 学会等名
      第71回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      20120919-20120921

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi