平成26年度は本研究課題の最終年度であり、これまで構築してきた磁気免疫検査システムの臨床評価、および平成25年度から実施しているスギ花粉抗原(Cry J1)の検出実験を引き続き実施した。その結果、システムに使用する一次抗体ポリスチレンビーズは、通常の検査に使用することが十分可能なレベルであることを実証できた。しかしながら、昨年度より遅れていたテーマである微粒子の開発は、市販品と同等レベルのものしか得ることができなかった。結果として、本システムは現在実用化されている免疫検査システムよりも数十倍高感度なものであることは実証できたが、当初の目標であった「血液1滴からの臨床検査」には耐えうるものでなく、成分分析には数マイクロリットルの血液が必要なレベルのものにとどまった。磁気検出システム(装置)、検出手法等の確立はおおむね達成しているので、今後磁気マーカーの開発が進めば、この問題点もクリアできるものになると考えている。 またスギ花粉抗原の検出においては、同じシステムを用いて100pgまで検出できることを実証した(論文作成中)。1ng、10ngと抗原の絶対量が増えるとそれに伴い磁気強度も大きくなる正比例の関係は得られたが、傾きが1より大幅に小さく、実用的なものとはなっていない。今後の課題として、タンパク質としての抗原量の測定は可能であるが、花粉そのものを使用した検出を行う必要がある。Cry J1は花粉の表面抗原であり、理論的には先の研究課題で測定可能なことを示した真菌類と同じような検出手段となるため、十分に可能であると考えられる。
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