研究課題/領域番号 |
24590720
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
樋口 理 独立行政法人国立病院機構長崎川棚医療センター(臨床研究部), その他部局等, 研究員 (50361720)
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キーワード | NMO / MS / AQP4 / 自己抗体 / ルシフェラーゼ / 血清 |
研究概要 |
本年度は視神経脊髄炎(NMO)およびNMO類縁疾患(NMOSD)のマーカーとされる抗AQP4抗体に加えて,多発性硬化症(MS)との関連が疑われる自己抗体・抗KIR4.1抗体についてもルシフェラーゼ免疫沈降法を利用した独自の抗体検査システムを確立した.ドイツの研究グループからMSの40%強の患者で当該抗体が陽性との報告が医学雑誌NEJMに発表されたのを受け,本邦における真偽を確かめる為に国内の複数の医療機関と共同研究を実施した.その結果,本邦のMSと確定診断された症例では当該抗体の陽性例は極めて稀であることが判明した.抗体検査の原理の相違から実験結果がドイツのグループと異なった可能性も考慮し,彼らの検査法(ELISA)を再現したが,やはり結果に大きな変化は認めなかった.以上の結果を踏まえて,少なくとも,我が国のMS患者の血清中には抗KIR4.1抗体が高率に認められないという結論に達した.現在,本研究成果をまとめた論文を作成中であり,近日中に学術雑誌への投稿を予定している.現在,本申請研究の成果をより充実させた内容にするべく,現在,NMO, NMOSD, MSを含めた中枢神経系免疫疾患における新規自己抗体の検査系確立を進めている.具体的には,最近上記疾患群との関連が疑われている抗MOG抗体に関する新規抗体検査法の確立に着手している.当該抗体検査法を確立した後は,上記の中枢神経系免疫疾患を対象とした抗体スクリーニング研究を実施し,関連する疾患の分子病態解明に役立てたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時には抗AQP4抗体を検査対象として挙げていたが,現在は,NMOの鑑別疾患であるMSに関して抗KIR4.1抗体を検査できる状況になっている(加えて,インターフェロンβに対する自己抗体検査系も確立).さらには,新たに抗MOG抗体の検査系の確立にも着手しており,関連疾患における自己抗体に関しては豊富なラインアップを揃えつつあると言える.全国的にみても,単独施設で上記の抗体群を一挙に検査できる例は殆ど存在しないだろう.その意味において,本研究課題の進展具合は順調と言える.
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今後の研究の推進方策 |
抗MOG抗体に関する新規抗体検査法の確立も含めて,NMO, NMOSD, MSを含めた中枢神経系免疫疾患における新規自己抗体の検査系確立を進め,関連する疾患の分子病態解明に役立てたい.一方,申請時に掲げた多検体高速検査体制の確立に関しては,当初のプランの変更が必要と考えている.申請時には磁性ビーズを利用した免疫沈降をセミオートマチック化することを予定していたが,ビーズの沈降速度が予想以上に早い点が想定外であったため,現在は免疫沈降のステップにバキューム式洗浄機の導入を検討している.この問題点をクリアすることで,予定通りの多検体高速検査体制が確立できると考えている.
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