研究課題/領域番号 |
24590722
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
河谷 正仁 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00177700)
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研究分担者 |
宮井 和政 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60283933)
善積 克 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70553379)
伊藤 登茂子 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50241675)
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キーワード | 下腹神経 / 会陰神経 / 骨盤神経 / 過活動膀胱 / プロスタグランジン / カプサイシン |
研究概要 |
下腹神経求心性神経を活性化させてこれが下腹神経節を介して反射を起こし膀胱活動を増強するかを検討した。昨年度は子宮からの信号を活性化させるために酢酸刺激、カプサイシン刺激、プロスタグランジンE2刺激を行い排尿反射の促進すなわち時間あたりの排尿回数の増加をみとめたことから、子宮の炎症性物質の増加は排尿反射を誘発する可能性があることを報告した。この問題を発展させるため、子宮ではなく、膣部よりバルーンを挿入し、内圧が10cmH2Oから30cmH2Oまで変化させたところ、排尿反射は増加傾向ではなく、逆に抑制された。特に30cmH2Oでは完全抑制がおきた。これは会陰神経の切断で消失したころから、尿道膀胱反射と同様に会陰神経を介して仙髄部で骨盤神経の遠心路を抑制されると考えた。ところが膣部へのカプサイシン(10-5M)の注入、プロスタグランジン(10-5M)の注入はいずれも排尿反射の間隔の短縮(20%, 35%)を認め、会陰神経の切断でも排尿反射の増強は持続したので交反射の可能性が示された。直腸へのバルーン挿入による拡張は予定していたより大きな内圧で排尿反射の影響を与えた。60cmH2Oまでその変化が認められず、また抑制を示し、会陰神経の切断で消失したことから、これも仙髄反射である可能性を示した。一方この部位へのカプサイシンやプロスタグランジンの投与は排尿反射間隔を短縮した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって骨盤臓器の反射は会陰神経を介して仙髄の骨盤神経機構を修飾する主に排尿を抑制する機構があり、膣や直腸を進展させることに誘発することが明らかとなった。これは尿道刺激で排尿反射が抑制されるのとほぼ同じ機構と考えられる。予想外であったのはこの部位へのカプサイシンやプロスタグランジンの投与が排尿を促進し、膣では会陰神経切除でも変化がなかったことである。これは会陰神経ではない神経が関与していることを示している。猫による神経放電実験は2例ではあるが実施し、下腹神経からの求心性神経活動が子宮・直腸・膣の拡張刺激で発火頻度が上昇することを確認し、一側の下腹神経を切断して下腹神経節側(中枢断端)からの放電記録を試み、放電数の増加を認めた。下腹神経節の中枢側は切断していなかったので、これが下腹神経―下腹神経による反射すなわちソコウニン反射によるものなのかは証明できなかったが可能性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
基本的計画は今年度同様にラットでは子宮・直腸・膣への炎症性物質の刺激による排尿反射への影響を検討する。また、猫においては下腹神経での神経放電を計測し、子宮・直腸・膣の拡張と炎症性物質の刺激による放電の変化を測定する。また、下腹神経―下腹神経の反射を測定し、これは膀胱・子宮・膣のどの部位からどの部位に連絡しているのかを検討する。その結果とし骨盤臓器にはいっている交感神経求心性線維の果たす役割を解明していく。古くは骨盤臓器の痛みは交感神経の求心路が機能するといわれたが、Morgan他の研究により骨盤神経が主な求心路と書き直された。しかし交感神経求心性線維は存在することから下腹神経節が反射起点として膀胱の活動性を高めていく機構を明らかとするための神経放電記録実験を実施する。
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