研究実績の概要 |
長期外用ステロイド剤の反復塗布に起因する掻痒症に対し、H4受容体拮抗薬を用いた新たな治療戦略の提案を目的とし、H26年度は以下の研究成果を得た。 ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎をはじめとする慢性掻痒性皮膚疾患の第一選択薬として頻用されるが、長期塗布に伴い適用部位に副作用として様々な毒性をもたらす。我々はこれまで、実験的慢性皮膚炎マウスに対しmediumクラスのステロイド剤であるデキサメタゾン (DEX) が、長期塗布により掻痒症状を増悪させることを報告してきた。H26年度の検討では、マウスDEX長期塗布誘発掻痒モデルに対するH4受容体拮抗薬の有用性を掻痒誘発予防の観点から検討した。BALB/c系雌性マウスの両耳介に2,4,6-trinitro-1-chlorobenzene (TNCB)を週3回反復塗布し慢性皮膚炎を誘発した。TNCB塗布開始2週間後より7週間、DEXを両耳介へ連日塗布すると共に、H4受容体拮抗薬 (JNJ28307474)あるいはH1受容体拮抗薬 (Fexofenadine)をそれぞれ20 mg/kgおよび30 mg/kgの用量で1日2回連日経口投与した。掻痒は掻破回数を、皮膚炎症状は耳介腫脹を指標に評価した。また、耳介組織中の掻痒および炎症関連因子mRNA発現量を測定した。 DEXは皮膚炎マウスの耳介腫脹を顕著に抑制したが、皮膚炎に伴い亢進した掻破回数の上昇は抑制せず、さらに増悪させた。JNJ28307474はDEXが誘発した掻破回数の増悪を強く抑制し、DEXによる耳介腫脹抑制作用を更に亢進した。一方、Fexofenadineは掻破回数、耳介腫脹いずれにおいても明らかな作用を示さなかった。以上の結果より、H4受容体拮抗薬は長期外用ステロイド療法に伴う掻痒の増悪を予防し、抗炎症作用を増強する有効な治療薬となり得ると考えられた。
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