研究課題/領域番号 |
24590726
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
室田 浩之 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90363499)
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キーワード | 痒みの発生・増強機序 |
研究概要 |
本研究ではアトピー性皮膚炎の痒み誘起因子が「温熱」であることに着目し、アトピー性皮膚炎の新しい治療戦略確立を目的とする。 1)神経栄養因子と温痛覚過敏の関係:神経栄養因子アーテミン、あるいはその誘導因子サブスタンスPが熱痛覚過敏に与える影響を熱刺激鎮痛効果測定機にて確認した。サブスタンスPを足底に投与したマウスでは投与12時間後には温度痛覚過敏が生じている事を確認した。この現象は神経栄養因子アーテミンの中和抗体によってキャンセルされた。アーテミンをマウス足底に投与した場合に も同様の温度痛覚過敏を生じた。アーテミンは温痛覚過敏に関与すると考えられた。 2)脊髄後根神経節細胞におけるTRPV1の発現:末梢での温度痛覚過敏は温度受容体であるTRPV1の影響を受けた結果ではないかと推察した。そこで初代培養の脊髄後根神経節細胞をアーテミンで6時間刺激したのちのTRPV1の発現をreverse-transcriptase PCRによって確認し、TRPV1mRNAの発現が増強することをしていることを確認した 3)TRPV1とアロネシスの関係:アーテミンによる温度痛覚過敏がTRPV1の発現増強に伴うものかを確認するためにTRPV1のアンタゴニストであるcapsazepine (CPZ)がHargreaves testとTail Flick testの結果に与える影響を検討した。その結果、CPZはアーテミンによる 温度痛覚過敏を改善しなかった。4)アーテミンを皮膚局所に限局的に投与すると中枢神経の増感を誘導する結果、全身の皮膚の熱感覚過敏を誘導することが確認された。背部皮膚限局的にアーテミンを投与したマウスを室温あるいは暑熱環境下におき、脳の興奮状態をMRIにて評価した。アーテミン投与マウスは室温でも中枢神経が増感しており、その興奮程度は暑熱環境下でより顕著になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果から大変興味深い結果が得られつつある。当初、アーテミンを皮膚に投与したマウスは、アーテミンの注射部位のみで熱過敏を呈するものと想定していた。ところが、アーテミンを肩甲骨間の皮膚に投与したマウスは38度の暑い環境で全身を掻爬、あるいは撫でるような動作を示した。つまり、皮膚局所におけるアーテミンの増加は全身の皮膚の温度過敏を誘導していた。これまで私たちはアーテミンが末梢神経の増感に関与するのではないかと考えていた。しかし皮膚局所への刺激が全身に投影されることから、アーテミン野皮膚への蓄積は末梢ではなく中枢神経の増感につながることが示唆された。そこで、マンガン造影magnetic resonance imaging(MRI)を用いて中枢神経の興奮状態を調べるという新しい研究を開始した。中枢神経の評価という次のステップにつなげられたことは多大な成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
アーテミンを投与したマウスの暑熱環境に於ける中枢神経の興奮状態をマンガン造影MRIにて評価し、中枢神経の増感を評価。この興奮がアーテミン中和抗体で抑制されるかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまで私たちはアーテミンが末梢神経の増感に関与するのではないかと考えていた。しかし皮膚局所への刺激が全身に投影されることから、アーテミン野皮膚への蓄積は末梢ではなく中枢神経の増感につながることが示唆された。そこで、マンガン造影magnetic resonance imaging(MRI)を用いて中枢神経の興奮状態を調べるという新しい研究を開始した。中枢神経の評価という次のステップにつなげられたことは多大な成果であった。そのため、当初予定していた試薬、抗体等の支出に変更が生じた。 アーテミンの中和抗体を主とし、MRI評価に必要な試薬と必要経費に当てる。
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