研究課題/領域番号 |
24590727
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
戸田 一雄 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80134708)
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研究分担者 |
木本 万里 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (60101565)
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キーワード | 性差 / 痛み / 下行性鎮痛 / ストレス / 鍼刺激 / 逃避反射 / 帯状回 / 可塑性 |
研究概要 |
疼痛認知に性差があることは明らかにされているが、一定の見解は得られていないたとえば、機械的な痛み刺激に対して女性は男性より閾値が低いとの報告がある一方、熱痛閾値は女性の方が高いとの報告もある。さらに、慢性疼痛下の情動系の反応に関しては性差が顕著であることも示されている。しかし、その成因メカニズムについては不明の点が多く残されている。性差の成因の第一としてホルモン系の関与が多くの研究者により示唆されている。動物実験においても、雄性ラットおよび発情前期の雌性ラットの足底皮下にホルマリンを投与すると、誘発される痛み行動は雌性ラットの方が有意に強く、この性差はエストロゲン依存性であることも示されている。このような性差の生理学的要因として侵害刺激に対する受容器レベルの感受性の差異、上行路におけるシナプス伝達の効率の差異等が候補としてあげられている。痛みは他の感覚にくらべてきわめて特異な感覚であり、その最終的な認知までには多くの変調系が関与している。性差の原因にはこのような変調系も含めた複雑な要素が関与している可能性が高い。特に注目される変調系としては、抑制系としての内因性鎮痛系であり、その中でも下行性鎮痛系が最も強力とされている。下行性の鎮痛路の主要経路は帯状回を起始とすることをが明らかにされており、その制御のもとに中脳中心灰白質ー大縫線核ー脊髄系が賦活されることを解明した。このような下行性鎮痛系の賦活程度の違いが疼痛認知における性差の成因に関与している可能性が大きいと考えられる。そこで「下行性鎮痛系の可塑的変化に性差があり、それが疼痛認知の性差を生じてさせている」という仮説を提唱し、疼痛認知における性差の成因機序を下行性鎮痛系の役割に注目して解明することを目的とする研究であり、平成25年度においては、メスにおける性周期と疼痛閾値との関連について解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はオスラットを用いて行動学的手法による疼痛閾値を解析したが、平成25年度はメスラットにおいて同様な解析を行った。特に、性周期をスメアを検鏡することで正確に判定し、各性周期における疼痛閾値および下行性鎮痛の起始部位とされる帯状回のニューロン活動も記録した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に向けて、下行性鎮痛系をストレス刺激や鍼刺激等を用いて賦活し、雌雄で賦活度が異なるかを解明する予定である。同時に、帯状回でのニューロン活動、中脳中心灰白質でのニューロン活動を記録することにより、下行性鎮痛系の活性レベルを判定する実験を行う。 成果の一部を欧州生理学会(ブダペスト)で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物購入費用を節約することができたが、研究は計画通り進んだ。残りの研究費を消耗品代として最終年度に利用する。 動物購入、薬品代として使う予定である。
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