疼痛認知に性差があることは明らかにされているが、その成因機序については不明の点が多い。本研究では、痛みの変調系、特に下行性鎮痛系の可塑的な賦活程度の違いが疼痛認知における性差の成因に関与している可能性をラットを用いて解析した。下行性鎮痛系の賦活には鍼刺激ないしはストレス刺激を用いた。おもな成果として1)下行性鎮痛系の起始部位のひとつである帯状回のニューロン活動はメスでは性周期により変動した。2)鍼刺激による鎮痛効果(逃避反射)はオスとメスで時系列的変化に有意差が見られなかった。以上から、痛みの感覚系に関しては性差は顕著でなく、他方、痛みの情動系に関しては性差が見られることが明らかになった。
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