研究課題/領域番号 |
24590731
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研究機関 | 東北薬科大学 |
研究代表者 |
溝口 広一 東北薬科大学, 薬学部, 准教授 (30360069)
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研究分担者 |
桜田 忍 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (30075816)
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キーワード | 多発性硬化症 / 疼痛 / μ受容体 / 鎮痛薬 / ジーンセラピー |
研究概要 |
昨年度の研究結果より、多発性硬化症疼痛のアロディニアに対しては、麻薬性鎮痛薬であるmorphineおよびmethadoneの鎮痛作用は、著しく減弱することが明らかとなった。そこで本年度は、多発性硬化症疼痛発症時における、腰髄部脊髄後根神経節での各μ受容体スプライスバリアントmRNAの発現量ならびにexon-1含有μ受容体スプライスバリアントのタンパク量の変化を測定した。その結果、各μ受容体スプライスバリアントmRNAの発現量ならびにexon-1含有μ受容体スプライスバリアントのタンパク量は、多発性硬化症疼痛発症時に変化は認められなかった。μ受容体は、protein kinase C等によりリン酸化されることによって不活性化し、細胞膜上に留まることが報告されている。それ故、多発性硬化症疼痛発症時には、脊髄μ受容体がリン酸化により脱感作している可能性が考えられる。現在、多発性硬化症疼痛発症時における脊髄神経細胞膜上のリン酸化μ受容体タンパク量を測定中である。 一方、難治性疼痛の一種である神経障害性疼痛の形成には、NMDA受容体の活性化が一部関与していることが報告されており、またμ受容体の脱感作にもNMDA受容体が関与していることが報告されている。そこで、多発性硬化症疼痛に対するNMDA受容体の関与を検討した。その結果、多発性硬化症疼痛のアロディニアは、NMDA受容体拮抗薬であるMK-801により一過性に改善された。また、同様の改善効果が、麻薬性鎮痛薬でありながらNMDA受容体拮抗作用を併せ持つmethadoneにおいても認められた。現在、多発性硬化症疼痛発症時におけるNMDA受容体の機能変化を測定中である。 以上本年度の研究結果から、多発性硬化症疼痛の形成には、NMDA受容体の活性化が一部関与しており、このNMDA受容体の活性化により誘導されたμ受容体の脱感作が、morphineの鎮痛効果減弱に関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は順調に研究が進展したが、初年度に実施を延期した実験が遅れとして残っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、多発性硬化症疼痛発症時におけるμ受容体ならびにNMDA受容体の機能変化を測定中である。次年度はそれに加え、初年度に実施を延期した実験を完遂し、多発性硬化症疼痛のジーンセラピーのためのターゲットを絞り込み、実際にジーンセラピーを試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に実施を延期した実験が遅れとして残っており、それに伴い研究費の使用計画に変更が生じた。 次年度の当初研究計画に加え、繰り越した研究費を使用して、初年度に実施を延期した実験を完遂する予定である。
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