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2013 年度 実施状況報告書

三叉神経系の疼痛受容が皮質拡延性抑制発生に及ぼす影響の解析と機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24590732
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

鳥海 春樹  慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (30528203)

研究分担者 畝川 美悠紀  慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (10548481)
キーワード片頭痛 / 脳血管障害 / CSD / 鍼灸 / Acupuncture / 鍼灸の科学化
研究概要

大脳皮質拡延性抑制(Cortical spreading depression :CSD)は、片頭痛発作の前兆に相当する現象と考えられ、脳血管障害における虚血巣周囲でも、相同の現象(Periinfarct depolarizations:PID)が起こることが知られる。これらの現象は、大脳皮質に対して障害性に働くため、この抑制機序を解明することは、片頭痛症状の改善や、脳虚血性疾患後の神経保護的な介入法を考案するための、重要な知見となる。本年度は、CSDの発生に頭頸部への疼痛侵害刺激がどのような影響を及ぼすかについて、前年度の成果を踏まえて更に研究を進展させた。本年度の研究における最も重要な知見は、三叉神経支配領域に形成したTrigger Point(TP)が、CSDの発生域値を低下させることを見いだした点である。TPは、片頭痛患者の頭頸部に形成されることが報告されているもので、いわゆる“コリ”として臨床上捉えられる症状である。興味深いことに、鍼灸医療(Acupuncture and Moxibustion)の領域において、このTP(=コリ)が片頭痛や脳血管障害の増悪因子として働いている可能性が、古来より経験的に指摘されている。しかしながら現在、その機構的な効果機序は明らかとなっていない。本研究の成果は、三叉神経を介したTPからの疼痛刺激が、脳表のCSDを“発生し易くしている”可能性を示唆するもので、未だEBMとして確立されていない鍼灸など代替医療の科学化にもつながる、重要な知見と考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

CSDの発生閾値に影響を与える要因につき、当初計画ではCapsaicinなどを用いた疼痛レセプターの刺激モデルのみを想定していたが、研究の進展により、TPのような筋組織の変化を介した知覚入力も、同様にCSDの発生閾値に対して影響を与えることが強く示唆されたため、本研究から得られる知見の重要性・汎用性が大きく広がった。

今後の研究の推進方策

現在まで得られた重要な知見を踏まえ、三叉神経への慢性的な知覚入力が頭蓋内の硬膜神経や中枢神経に及ぼす影響に付き、更なる研究を進める。慢性的な知覚入力を起こすモデルとしてはTP形成モデルを活用し、硬膜神経や中枢神経系への影響については、生体イメージングの手法を活用して解析し、片頭痛や脳血管障害に対する新たな治療法の開発につなげる。

次年度の研究費の使用計画

前年度までの研究の進展により、CSDの発生域値に対してTrigger Pointが重大な関与をしている可能性が示唆されたため、昨年度は予備実験に注力し、本年度の本実験実施のために必要なパラメータを取得に重点を置いた。計上された次年度使用額は、本年度の研究遂行のための計画的なものである。
TP作成の急性期モデルは既に確立されており、本研究においても活用しているが、本研究の成果を発展させるために必要なのは、形成されたTPの慢性化機序解明であり、この研究には多数の動物および試薬類が必要である。本年度は、慢性化に至る時間経過を分子生物学的なパラメータを使用して解析する予定であり、これに次年度使用額として計上されたものを使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Microvascular sprouting, extension, and creation of new capillary connections with adaptation of the neighboring astrocytes in adult mouse cortex under chronic hypoxia.2014

    • 著者名/発表者名
      Masamoto K, Takuwa H, Seki C, Taniguchi J, Itoh Y, Tomita Y, Toriumi H, Unekawa M, Kawaguchi H, Ito H, Suzuki N, Kanno I.
    • 雑誌名

      J Cereb Blood Flow Metab.

      巻: 34 ページ: 325-331

    • DOI

      10.1038/jcbfm.2013.201. Epub 2013 Nov 20.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 頭痛専門診療における鍼灸併用の可能性2013

    • 著者名/発表者名
      鳥海春樹
    • 雑誌名

      神経内科

      巻: 78 ページ: 550-555

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Activation of extracellular signal-regulated kinase in the trigeminal ganglion following both treatment of the dura mater with capsaicin and cortical spreading depression.2013

    • 著者名/発表者名
      Iwashita T, Shimizu T, Shibata M, Toriumi H, Ebine T, Funakubo M, Suzuki N.
    • 雑誌名

      Neurosci Res.

      巻: 77 ページ: 110-119

    • DOI

      10.1016/j.neures.2013.08.001. Epub 2013 Aug 17.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Differential cellular localization of antioxidant enzymes in the trigeminal ganglion.2013

    • 著者名/発表者名
      Sato H, Shibata M, Shimizu T, Shibata S, Toriumi H, Ebine T, Kuroi T, Iwashita T, Funakubo M, Kayama Y, Akazawa C, Wajima K, Nakagawa T, Okano H, Suzuki N.
    • 雑誌名

      Neuroscience.

      巻: 248 ページ: 345-348

    • DOI

      10.1016/j.neuroscience.2013.06.010. [Epub ahead of print]

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Potassium-induced cortical spreading depression bilaterally suppresses the electroencephalogram but only ipsilaterally affects red blood cell velocity in intraparenchymal capillaries.2013

    • 著者名/発表者名
      Unekawa M, Tomita Y, Toriumi H, Masamoto K, Kanno I, Suzuki N.
    • 雑誌名

      J Neurosci Res.

      巻: 91 ページ: 578-584

    • DOI

      10.1002/jnr.23184. Epub 2013 Jan 18.

    • 査読あり
  • [学会発表] シンポジウム「頭痛の玉手箱」神経内科鍼外来の頭痛~経験則の科学化と適正活用による治療戦略の多様化を模索する~2013

    • 著者名/発表者名
      鳥海春樹
    • 学会等名
      第41回日本頭痛学会総会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター
    • 年月日
      20131115-20131116
    • 招待講演
  • [学会発表] シンポジウム「ここまでわかった鍼灸医学・基礎と臨床の交流」2013

    • 著者名/発表者名
      鳥海春樹
    • 学会等名
      第62回全日本鍼灸学会学術大会
    • 発表場所
      アクロス福岡
    • 年月日
      20130607-20130609
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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