平成26年度は、研究計画に則り、Cortical Spreading Depression(CSD)について中枢神経系と末梢神経系の両面から検討した。中枢神経系における検討としては、CSD発生やその持続に影響を及ぼす、微小循環解析およびNeuro-Vascular unit解析の視点で新たな知見を得た。また、末梢神経系からの検討としては、まず三叉神経系に加えられた慢性的な侵害疼痛刺激が、脳幹三叉神経尾側核などにおいて惹起するSensitizationにつき、アストロサイトやミクログリアの活性と刺激強度との相関の詳細を検討し、これらの成果を元に、当該研究の臨床活用として当初より重視している鍼灸(しんきゅう:Acupuncture)の作用機序との関連性を考察し、先行研究の集塊と共に総括し、この内容が複数の学会でシンポジウムに取り上げられ、自身も招待講演を行った(業績参照)。また、臨床的に重要なCSDの波及領域についての検討を進め、非常に興味深い知見を集積した。また、疼痛侵害刺激が三叉神経系や中枢神経系に惹起する酸化ストレスについても分子生物学的な手法を主に検討を進め、重要な知見を得て将来的な研究の方向性を打ち立てることができた。中枢および末梢神経系がCSDを仲立ちに相互に関連している現象について、in vivo電気生理学的検討と分子生物学的解析を併用することで、体性感覚刺激によるCSDの変容という、未だ未知の現象について、科学的に検討できるプラットフォームを構築できる自信を得た。 すなわち、CSDという現象について中枢神経系、末梢神経系の両面から検討を加えてきた3年間の検討は、将来的な頭痛診療のみならず、中枢神経系が関与する慢性疼痛性疾患の治療に対する治療ツールの設計戦略に、非常に重要な知見を集積することに成功したと考える。
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